丸の内線の茗荷谷駅から春日通りを池袋方面に歩いて10分弱のところに大黒湯さんがあります。お茶の水女子大や跡見学園、拓殖大学など、周辺に学校がたくさんあるためか、おしゃれなカフェなどが点在していて、歩いていても楽しい道のりでした。

広い通りに面した大黒湯さんを、反対側の歩道から眺めてみたところ、お店入り口を挟むように掲げられた両側の「コインランドリー」の文字に気がつきました。なぜ両側に? 洗濯機の種類が違うとか? コインランドリーも男女別? といろいろ考えましたが、まずはお邪魔してお店の人に尋ねてみることにします。

春日通りに面して、バス停「大塚三丁目」もすぐ

玄関から入ると、正面に大きなフロント、そして明るく清潔な待合スペースがあります。まだ改装して間もないこちらのスペースで、4代目ご主人の岡嶋良太さんに大黒湯さんについてお話を伺うことができました。

木のぬくもりが感じられる玄関

 

大黒湯のおすすめポイントはこれだ!

大黒湯さんといえば、真っ先に目を引くのが浴室の天井の湯気抜きです! 男湯と女湯にまたがる広い天井のど真ん中に、大きな八角形の湯気抜きがあります。昔はほかの銭湯にもあったようですが、今では都内の銭湯でこの八角形の湯気抜きがあるのは大黒湯さんだけだそうです。昭和39(1964)年に建て替えたときに作られたそうで、岡嶋さんのお話によると、大工さんが富山県の出身だったようで、そちらの地域の造作らしい、とのこと。下から見上げると全方向からやわらかい光が降り注いできて、教会にいるような荘厳な雰囲気でした。これは大黒湯さんのおすすめポイントその1ですね!

浴室の湯気抜きは圧巻。一見の価値ありです

さらに大黒湯さんのおすすめポイントを岡嶋さんに伺ったところ、2つ目は「スチームサウナ」。ドライサウナに比べて温度が低い分、お肌に優しいようです。実際に私も営業開始後にお湯をいただき、このサウナに入ってみたのですが、ドライサウナに比べて圧倒的に息をするのが楽でした。汗のかき具合はドライサウナと変わらないようです。

サウナ室内には砂時計もあります

3つ目は「地下約200mから汲み上げている地下水を使ったお湯」で、「水がいい」とお客さんからお褒めの言葉をいただくのだそうです。確かにお湯がやわらかく、薬湯もバイブラも思わず溜息が出てしまう気持ちよさでした。

天然水100%のお湯を堪能できます

薬湯は日替わり。当日はペパーミントの爽快な香りでした

心地よいお風呂につかりながらボーっとしていると、壁のタイルが目に入ってきました。よく見ると水面にヨットや船が浮かんでいて、港町の絵のようです。後で聞いたところ、これはラ・ロシェルというフランスの西部に実在する港町の絵だそう。ある日、外国人のお客さんが「これは自分の地元の港の絵だ!」といって、後日、郷里から全く同じ角度の絵葉書を送ってくれたそうです。先代が何故、ラ・ロシェルのタイル絵を選ばれたかは謎のままですが、時を超えてお客さんが答えを運んできてくれた、と考えるとロマンチックだなあと思いました。

ラ・ロシェルの風景を描いたタイル絵

 

昭和から平成、令和へ。時代とともに刻まれる銭湯の歴史

謎といえば、お店の両側に2つあるコインランドリーについては、「あれはそれぞれ男湯と女湯の脱衣場から見える中庭スペースだったんですよ」と笑いながら教えてくださいました。特に洗濯機の種類が違うとかオーナーが違うとかではなく、単にスペースがどちらか片方では足りなかったから、ということのようです。池もあった中庭をコインランドリースペースに改築したのが昭和40年代あたりだそうなので、コインランドリーも今に比べたら需要が高かったのでしょう。これまで伺ったさまざまお話から、良太さんで4代目という大黒湯さんが積み重ねてきた歴史の重みが伝わってきました。

「今後の大黒湯さんはどんな銭湯になっていきたいですか?」と質問したところ、「より幅広い層のお客様に来ていただける銭湯でありたい」とのこと。大黒湯さんは室内も明るく清潔で広々としていて、初めて銭湯を体験する方にもおすすめです。また、女湯には小さく浅めで湯温も低めの浴槽が併設されていて、これは小さなお子さんも入れるように、という優しい配慮なんだそうです(男湯側は水風呂になっています)。

ほかの浴槽に比べて浅いので、お子さん連れでも安心

銭湯からの一杯はいかが? おいしいお店をお薦め

最後に「大黒湯さんで汗を流した後にちょいと一杯にお薦めのお店、近くにありますか?」とややお風呂には関係ない質問をしたところ、「茗荷谷駅そばに和来路(わらじ)という有名な居酒屋がありますね」と教えてくださいました。ご自身もよく行かれるのだとか。赤提灯に縄のれんが下がる、昭和の風情漂うお店です。こ、これは間違いない……ッ! もう1軒、やはり茗荷谷駅近くの「焼肉 和(かず)」という30年以上続く老舗も予約必須の人気店と教えてくださいました。

大黒湯さんのやわらかい極上のお湯でさっぱりと1日の疲れを流して温まったあとに、美味しいお酒と肴で軽く一杯……。控えめにいっても最高の1日になること間違いなしです。「一杯」が気づいたら「いっぱい」になってしまうかもしれませんが、全力でお薦めします!

 

12/20(日)は生柚子の湯を実施!

大黒湯さんを含む文京浴場組合所属の4つの銭湯では、2020年12月20日(日)に「生柚子の湯」を実施します。ゆず湯の癒しで免疫力をアップし、あたたかくすこやかな年末年始をお過ごしください。詳細はこちら

さまざまなイベントを活発に行われている、今後の大黒湯さんに要注目です。

(写真・文:銭湯ライター 山口安代

 

※4代目の岡嶋良太さんからのメッセージをどうぞ!


【DATA】
大黒湯(文京区|茗荷谷駅)
●銭湯お遍路番号:文京区 2番
●住所:文京区大塚3-8-6
●TEL:03-3941-5826
●営業時間:15時半~23時半
●定休日:月曜
●交通:東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅下車、徒歩7分
●ホームページ:http://www.sentou-bunkyo.com/daikokuyu.html
銭湯マップはこちら

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

コロナ対策にオゾン発生器を導入

かわいい銭湯広告。
壁紙もやわらかいリボン柄で女性らしい

男湯の脱衣場はブルーの壁紙がアクセントに

やわらかな陽光が作る美しい瞬間

ドット絵のお洒落なのれんが目印です

お話を聞かせてくれた4代目の岡嶋良太さん