常盤湯は、宮造りの建物を活かしながら全面リニューアルを行い、2023年3月にオープンしたばかりの銭湯である。リニューアルと同時に新たに掘削した温泉も提供することになり、「深川温泉 常盤湯」と屋号も改めた。

「常盤湯の歴史上、最高の銭湯を目指している」と、代々受け継がれた銭湯を守るため、家業を継ぐことを決意した若旦那の山本彬善(あきよし)さんのお話を元に、生まれ変わった常盤湯を紹介したい。

山本家がこの地で銭湯を営み始めたのが、昭和20(1945)年頃のこと。彬善さんの祖父である安雄さんが「山の湯」という屋号で営み、その後、当時の地名「深川常盤町」から「常盤湯」に改めた。ちなみに書類等の記録はないのだが、常盤湯が建つ場所では江戸時代から銭湯が営まれてきたと、代々言い伝えられている。

さて、若旦那が常盤湯にかかわるようになったのは、今回のリニューアルからである。以前は企業の合併や買収をサポートする会社で働き、企業の再生も手掛けていた。そうした社会経験をいつか常盤湯で役立てたいと考えており、家業を継ぐ心づもりはできていたという。

今回のリニューアルでは時代に合った銭湯を目指す若旦那のアイデアが随所に活かされている。例えば、鯉が泳ぐ大きな池があった男湯の庭は大きく様変わりし、温泉の露天風呂、水風呂、サウナが新たに設けられたほか、多数のいすが並べられ外気浴でくつろげるようになった。以前は熱い湯が売りのシンプルな設備の銭湯だったが、今回のリニューアルによって内湯には炭酸泉やシルク風呂などの最新設備が導入され、お湯の温度も入りやすくなった。

私は祖父の安雄さんの時代から常盤湯には撮影で何度か足を運んでいるが、今回の撮影では、かつては少なかった若いお客さんがひっきりなしにのれんをくぐる風景を目にした。リニューアルによって新たな客層を呼び込むことに成功している姿は心強い。

リニューアル前の常盤湯は昭和の空気感が漂う昔ながらの雰囲気が魅力的で、100歳まで番台に座っていた祖父の安雄さんには私の銭湯写真集にも登場してもらった。そんな以前の風景を知る身としては、リニューアルのニュースを知った時は、期待と寂しさが入り混じった複雑な心境だった。

しかし、最先端の設備を導入しつつも、脱衣場の格天井や瓦屋根などをそのまま活かしたリニューアル後の姿を見ると、「祖父が残してくれたものを大切にしたい」という若旦那の思いが随所に感じられ、歴史が受け継がれていることを嬉しく思った。

撮影のためドローンを飛ばしてみると、常盤湯の周辺は想像以上にビルで囲まれていた。上空から見ても、この町における常盤湯の存在感は別格である。少なくなった昔ながらの宮造り銭湯の堂々とした佇いに、最新の設備と温泉が加わった新生・常盤湯。令和の時代に新たな歴史を刻んでいく。
(写真家 今田耕太郎)


【DATA】
深川温泉 常盤湯(江東区|森下駅)
●銭湯お遍路番号:江東区 1番
●住所:江東区常盤2-3-8(銭湯マップはこちら
●TEL:03-3631-9649
●営業時間:12時~24時半
●定休日:木曜(祝日でも営業)
●交通:都営大江戸線「森下」駅下車、徒歩5分
「清澄白河」駅駅下車、徒歩6分
●ホームページ:http://koto-1010-sento.jp

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リニューアルを機に跡を継いだ山本彬善(あきよし)さん


今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。
2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。
http://www.imadaphotoservice.com/

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