「山の手はおしゃれ、下町は庶民的」はもう古い? 進化する東京銭湯について、熱烈銭湯ファンであるイラストレーター二人が激アツ対談! 東京の東側のおすすめ銭湯を紹介するのは浴室限定漫画『銭湯戦士 セイント☆セントー』や「銭湯もりあげた~い」公式キャラ「お湯わいてるぞう」の作者として知られるメソポ田宮文明さん。西側のおすすめ銭湯を紹介するのは銭湯とプリンスを融合させた個展「LOVESEXY風呂」を開催したり、雑誌や新聞で銭湯に関する執筆を行ってきているラジカル鈴木さん。銭湯通の二人がおすすめする銭湯とは!?

企画・構成=目崎敬三(銭湯ライター)
対談場所:岡田湯(足立区関原)

メソポ田宮文明さん(左)、ラジカル鈴木さん


熱烈銭湯ファンによる「東京銭湯」激アツ対談(その1)はこちら
熱烈銭湯ファンによる「東京銭湯」激アツ対談(その2)はこちら

 

4.仕上げの休息所で選ぶ、東西オススメ銭湯

ラジカル鈴木 さて、それでは湯から上がって休息所に行きましょうか。僕の東京の西側の銭湯でおすすめを3軒。羽衣湯(渋谷区本町)、草津湯(大田区東矢口)、千代乃湯(武蔵野市井口)です。

羽衣湯さんは、円形の建物の中に休息所があって、半円型の広いスペースが、マンガ喫茶かというくらいの、6000冊を超えるコミックの本棚で埋め尽くされています。また、こんなに多種のビール&発砲酒があるとこは珍しい、というくらいの品揃え。スナック菓子から軽食までおつまみの種類も豊富で、僕は必ず缶ビールとカップ麺をいただきます。

羽衣湯(渋谷区本町)

 

草津湯さんは、リクライニングシートと、サーバーの生ビール! ですね。風呂上がりに、カウンターのサーバーで注いでもらったジョッキと、豊富な種類からチョイスしたおつまみを持って、広い休息所にずらりと並んだ贅沢なチェアに寝そべって、大きなTVモニタを観ながらグビリとやる、この瞬間はまさに天国ですね~~!! そしていつも、おかわりしちゃいます。

草津湯(大田区東矢口)

 

メソポ ラジカルさんの休息所のキーワードは、どうやら「ビール」と「おつまみ」のようですね。

ラジカル 大事です(笑)。あとは千代乃湯さん。ここの休息所はもう、独立したお店と言っていいほどの充実度で、縁日をイメージした子供に喜ばれるメニューは全種食べたくなっちゃう美味しさ。洗練された器やお皿も良く、スタッフも親切で居心地最高。ここでもやっぱり生ビール。ジョッキ凍ってます~。何を食べてもうまいんですが、僕のおすすめは、こんなに柔らか~いのを他に知らない、タコ焼きです。あと、夏はかき氷ですね~。

千代乃湯(武蔵野市井口)

 

メソポ ラジカルさんのお話を聞いていると、お腹が空いてきますね(笑)。じゃあ私の好きな休息所を。先に殿堂入りからいきますね。広いスペースで飲食ができるひだまりの泉 萩の湯さん(台東区根岸)と、特に若い銭湯ファンの方にはロビーで開催されるイベントも大人気で、1階には若旦那さんのお母様が切り盛りする焼鳥屋さんもある梅の湯さん(荒川区西尾久)は別格ということにさせていただきました。

好きな休息所に選んだのは薬師湯(墨田区向島)、ニュー恵美須(荒川区東尾久)、岡田湯(足立区関原)の3軒です。

薬師湯さんは銭湯業界で有名な長沼三兄弟の長男さんが店主です。ちなみに殿堂入りの萩の湯さんは次男の方がやっていらっしゃいます。薬師湯さんのロビーの雰囲気が家庭的といいますか、和むんですよね。

ラジカル よく分かります。あの場所で飲んだ、キンキンに凍ったジョッキに注いでいただいた、缶ビールの味は最高でした!

薬師湯(墨田区向島)

 

メソポ (笑)。ニュー恵美須さんはロビーが広いんですが、その奥に江戸間で12畳の和室がありまして。昔はここでカラオケ大会などもやっていたそうで、古い機材などが今も置いてあります。また、ご高齢ながらとても元気な女将さん&従業員さんがペアでフロントにいらっしゃる場合が多いのですが、行くといつもパワーをもらっています。

ラジカル ニュー恵美須さんの女将さん、いいなあ~、今度会いたいですね。

ニュー恵美須(荒川区東尾久)

 

岡田湯さんの休息所は、実はいま我々が対談している場所ですね(笑)。約10年前に改装されて、湯上がりの休息所がギャラリーのようになっています。今は銭湯をおしゃれに改装するのがなんとなく流行りのようにも感じますが、その先駆けと言ってもいいのではないでしょうか。

岡田湯(足立区関原)

 

5.これからの銭湯

ラジカル では最後に、東西問わず、これからの銭湯について話しましょう。最近、若い人が経営に加わったりして、リニューアルやリノベーションなど、銭湯の新しいカタチへの進化のニュースを聞きます。いま特に、新型コロナの影響もあって、銭湯の役割も変わってきていると思いませんか?

メソポ この岡田湯さんの休息所も、テーブルはアクリル板で仕切られていて、密にならないように気を付けています。コロナ時代に銭湯の役割はとても大きいと思いますね。銭湯へ行って大きな湯船に浸かったり、交互浴をしたりすることで、コロナ対策などで生じるストレスや疲れも軽減でき、免疫力を高められるのではないでしょうか。

ラジカル もともと銭湯は清潔を心がけていますからね。コロナ時代だからこそ、もっと銭湯を利用したほうが良いと思います。僕のまわりでも、渋谷区とか世田谷区の銭湯は、近隣の人が訪れるようになって、地域密着の比率が増しているような気がします。リモートワークなどで、より地元の銭湯に行く機会が増えたのかもしれません。

メソポ それは下町の銭湯も同じですね。昔から地域密着でしたけれど、地元の若い人が増えた気がしますね。錦糸町の黄金湯さんは「次世代に銭湯文化を残していきたい」という思いでこの8月にリニューアルオープンし、“新スタイルの銭湯”として若者でにぎわっています。東京の銭湯、東西それぞれに魅力的なところはたくさんありますが、共通するのは「清潔さ」と「地域密着」だと思います。

ラジカル ぜひ、銭湯で体を整えて、免疫力を高めておいしいビールを飲みましょう!

メソポ それが結論ですかね(笑)。やっぱり心と体の健康に銭湯は一番です。(了)


ラジカル鈴木(らじかる・すずき)

イラストレーター、文筆家。銭湯愛好家、にんにく愛食家。
年間300日銭湯に通う。2020年10月末現在、都内銭湯は、無き店舗も含め282軒来湯。
遅れて始めた銭湯お遍路帳は三冊目最後のページ。全国では350湯以上来湯。
2018年銭湯とプリンスを融合させた個展「LOVESEXY風呂」みどり湯(目黒区緑が丘) 押上温泉 大黒湯(墨田区横川)で開催。同年、gallery yururiにて関連トークイベントを開催。
散歩の達人、日刊ゲンダイ、日刊大衆、等で銭湯に関する執筆、絵付きの取材、放送出演も多数。 
名画座探訪
ラジカル鈴木 公式サイト

 

メソポ田宮文明(めそぽたみや・ぶんめい)

イラストレーターを中心とした自由業者。日本漫画家協会会員。
『銭湯もりあげた~い』隊員で公式キャラ『お湯わいてるぞう』作者。
銭湯好きが高じて、近年では薬師湯(墨田区向島)・ひだまりの泉 萩の湯(台東区根岸)・寿湯(台東区東上野)で3銭湯浴室限定漫画『銭湯戦士 セイント☆セントー』連載、2018年、台東区浴場組合タオルデザインを担当。
玉の湯(足立区綾瀬)のれん・浴室デコレーション、寺島浴場(墨田区東向島)Tシャツ・トートバッグのデザインなども手がける。
昭和レトロ系webサイト『ゴールデン横丁』で銭湯関連エッセイを連載中。