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 昨年5月にリニューアルオープンした久松湯を訪ねた。西武池袋線桜台駅から徒歩5分、店の前に立ってみると……おおっ、まるで美術館か博物館のよう! 「地元の人も、銭湯ができたってまだ気づいてない人がいるみたい」と笑うのはご主人の風間幸雄さん。なんでも改装にあたっては「これまでにない銭湯を作りたい」というコンセプトで挑んだとのこと。

 ホテルのようなフロントの先にある浴室は、白と黒のモノトーンで統一され、なんともシックでオシャレ。壁際に水風呂、電気風呂と3つのジェットを備えた大浴槽、血行促進に効果がある炭酸泉と湯船が並ぶ。

 そして、傍らのドアを開けると露天風呂。湯船に張られている茶褐色のお湯は、新たに掘削された天然温泉だ。地下1500mからくみ上げたナトリウム―塩化物強塩の温泉は、有馬温泉の成分に似ており、保湿効果が高く関節痛や神経痛などに効果があるとのこと。露天の開放感が味わえ、お湯が温泉ときたら、これはもう小旅行気分である。

 さて、設備もさることながら、感心させられたのは店内のどこにいてもガラス越しに陽が差し込み、木々の緑が目を楽しませてくれること。実は全体が「光と風、雑木林の中の銭湯」をイメージして設計されているため、中庭や露天の庭が脱衣場や洗い場を挟み込むように配置されており、明るく開放的に感じるのだ。

 そして、銭湯といえば富士山の背景画を思い浮かべる人も多いと思うが、久松湯では映像作品をプロジェクターで壁に投影する「プロジェクションマッピング」を採用。湯船につかりながら変化する映像を見ていると、時がたつのを忘れそうだ。銭湯でこんな演出をしているのは日本で、いや世界でもここだけだろう。

 そのほか、黒色の四角い桶、シャワーやトイレを示すアイコンなど、細かいところまでデザインワークが行き届いているのには脱帽。

 銭湯のイメージをくつがえす、新しい取り組みが随所に見られる新時代の銭湯をぜひ体験してほしい。

(編集部)

※1010・132号で紹介

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採光窓より差す光が湯船を照らす

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プロジェクターの光が浴室の壁を照らす

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露天のお湯は有馬温泉に似た泉質

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美術館か博物館を思わせる外観

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庭が見える洗い場


【DATA】
天然温泉 久松湯(練馬区|桜台駅
●銭湯お遍路番号:練馬区14番
●住所:練馬区桜台4-32-15
●TEL:03-3991-5092
●営業時間:11時~23時
●定休日:火曜
●交通:西武池袋線「桜台」駅より徒歩5分
●ホームページ:http://www.hisamatsuyu.jp/
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