「毎日の癒しをお手伝いする」とお客さんへの思いを聞かせてくれた、堀田湯店長の大塚輝さん(下写真)。その話をもとに、堀田湯が現在に至るまでの経緯をご紹介しよう。

堀田湯の創業は昭和17(1942)年。80年続く老舗の銭湯である。東武伊勢崎線西新井駅から徒歩7分、下町情緒が漂う商店街に面している。

半年間の大規模改装工事を経て今年(2022年)の4月にリニューアルオープンを迎えた。懐かしさを感じる瓦屋根はそのままに、堀田湯の新たなコンセプトである「街を温める」を象徴する個性的なのれんが街に彩りを添える。夕暮れ時に撮影していると、杖を携えた高齢者や親子連れがそののれんをくぐって行く。

格子状に造られた外壁からは、ロビーの様子が垣間見え、そこら漏れ出す光が街を照らしている。のれんをくぐり、中に入ると正面にフロントがあり、一見さんも常連さんも分け隔てなく笑顔で迎えてくれる。大塚さん自身も、常連さんとやり取りを重ねる日々を過ごすうちに、体のことを心配してくれたり、厳しい意見をくれたりと、「心を開いてくれたのかな」と思えるような変化を肌で感じているという。

全体的に刷新された浴室の中で唯一残されたのが、浮世絵をモチーフとしたタイル絵。長年親しまれてきた堀田湯のシンボルは今も色あせず、真新しい浴室の中でもひときわ魅力的で、その美しさに我を忘れてしまう。また、湯船の底にはデザインに優れた滑りにくいタイルが貼られており、入浴文化を支える技術を肌で感じることができる。

男湯の露天エリアの湯船はそのまま残し、サウナ専門家の監修のもとに設計された薬草サウナと、水深160cmの水風呂が新たに設置された。夜空を見上げながらの外気浴は、日頃の疲れを癒してくれるだろう。

さて、家族経営が当たり前の銭湯だが、店長として運営を任されている大塚さんは、元々は堀田湯の3代目主人にあたる堀田和宣さんが社長を務める都内のウェディング関連会社でウェディングプランナーとして働いていた。理想の経営者と仰ぐ和宣さんの発想力や企画力を間近で感じる機会を得た大塚さんは、「自分が尊敬する社長の歯車でよい」という気持ちが先立ち、銭湯のリニューアル企画が立ち上がった当初の会議では何も発言ができなかったという。

上野の寿湯で3ヵ月の見習いを終えたころ、銭湯の店長としての責任感が日に日に増し、堀田湯に対する思いに変化が生まれた。「自分の力を必要としてくれている」と感じ始めたことで積極的にリニューアルに関わるようになり、浴室の鏡広告の募集をはじめ、地元の企業への働きかけは大塚さんが全て行った。

これまで銭湯とは縁のなかった大塚さんだが、店長を任され、毎日さまざまな人と接するうちに「銭湯は想像以上にコミュニケーションの舞台であり、人生の支えになっている人もいる」と思うようになった。確かに私自身も銭湯のない人生は考えられず、心の拠り所にしている。銭湯で人と人とが接することで温かさが生まれ、それが街を温めることにつながるのなら、こんなに素晴らしいことはないだろう。
(写真家 今田耕太郎)


【DATA】
堀田湯(足立区|西新井駅)
●銭湯お遍路番号:足立区 52番
●住所:足立区関原3-20-14
●TEL:03-3852-4126
●営業時間:14~24時、土日祝8~24時
●定休日:第2木曜
●交通:東武伊勢崎線「西新井」駅下車、徒歩7分
●ホームページ:https://www.4126.tokyo
●Twitter:@hotta_nishiarai
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今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。
2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。
http://www.imadaphotoservice.com/

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