例えばこんな情報をWEBサイトで見かけることがあります。

「41~42度のお湯に3分つかって5分休憩という入り方を3~4回反復することによってダイエット効果が現れます。でも、この方法は単に急激に大量の汗をかいて痩せさせるものではなく、体内の代謝を上げ、脂肪の燃焼しやすい体質作りをするダイエット法です」

お風呂について最もよく言われるダイエット効果が、「体を温めて代謝をアップさせる」というものです。「お風呂ダイエット」を名乗るほとんどの情報は、この代謝アップ効果を謳います。ただ、これは入浴に関する大きな迷信だと医師は警告しています。

どこに問題があるのでしょうか。まずは、「この代謝アップ」の真相を解明しましょう。「代謝をアップする食品はこれだ! とか「○○には代謝を上げる効果がある!」というフレーズを私たちはよくよく目にします。実はこの「代謝アップ」、効果がないダイエット方法でよく使われる謳い文句だということをご存知ですか?

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ダイエット法のノウハウで使われる代謝とは、エネルギー代謝、平たくいうとカロリー消費のことなのです。カロリーの消費量が増えれば、体脂肪を燃焼する量も増えますから、痩せる効果はあるといえます。ポイントは、お風呂に入って果たしてカロリー消費が増えるかということなのです。

よくいわれることですが、代謝を上げるには体温を高くしなければなりません。逆にいえば、体温の高い人はそれだけ代謝が活発で、カロリー消費が増えるために太りにくいわけです。「体温が1℃上がると基礎代謝が約15%上がる」とよくいわれています。確かに、体温と代謝は深い関係にあるのは間違いありません。

ここで間違えてはいけないこと、それは「体が熱を作ってはじめて、体温が上がる」ということ。体がエネルギーを消費して熱を作り、体温が上がるのですから、消費カロリーが高くなるのは当たり前のことです。では、お風呂で体が温まるのは?

お分かりですね。入浴によって体温が上がるのは、体がお風呂の熱を受け取っているからです。というか、それだけのことでそこにカロリー消費はありません。ですから、お風呂でいくら体が温まっても、いくら汗をかいたとしても、消費カロリーは増えないのです。「体温が1℃上がると基礎代謝が約15%上がる」は言葉のトリックで、正確には「基礎代謝が15%上がるぐらい熱を作ると、体温は1℃上がる」といわなくてはならないのです。

ダイエット効果といえるものがあるとすれば、それは体脂肪の減少です。入浴で仮に体重が1~2kg減ったとしても、これは体脂肪が減ったわけではありません。汗をかいて体内の水分が減っただけ。ですから、その後に水分を取ればすぐに元の体重に戻ります。入浴で体重が落ちても痩せたわけではなく、体重が戻っても太ったわけではありません。

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体脂肪と水分は、変化する早さが全然違います。体内の水分はすぐに1~2kgぐらい変化し、1日の中でもかなり変動します。一方、運動しても入浴しても体脂肪は1日に100~150gぐらいしか変化しません。短期的な体重の変化は、ほとんどが水分の変化なのです。しかし、1日に体脂肪が100gしか減らないとすれば少ないような気もしますが、毎日100g減らせれば1ヵ月で3kg体脂肪を減らすことができるのです。これこそ、ダイエット効果といえるでしょう。でも、それは入浴では実現できません。

では、入浴のダイエット効果はやはり迷信? いや、そんなことはありません。どんでん返しのようですが、摂取カロリーよりも消費カロリーが多ければ体脂肪は減る、という大原則に立脚すると、入浴は有効なダイエット法になるのです。入浴医学の権威、東京都市大学の早坂信哉教授が著書『たった1℃が体を変える』でこう述べています。

「食前に40度で15分お風呂に入るのは効果があります。入浴によって体の表面に血液が回る分、一時的に胃や腸の働きが抑制され、食欲を抑えることができるからです」

ぜひお試しください。


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