前回、銭湯入浴を頻繁にする人は「よく笑う」傾向が高く、笑いには病気に強くなり、ボケを防ぐ可能性もあるから、まわりまわって頻繁に銭湯に通うことは健康長寿を実現する手段の一つかもしれない、ということを書きました。何気なく楽しんでいる銭湯入浴にこんな素晴らしい秘密が隠されていたことが、銭湯入浴と幸福度調査によって解明されつつあります。そこで今回はもう少し掘り下げ、銭湯利用者層の中の主観的幸福感の高い・低いと笑いの関係について、男女別、年代別、地域別に見ていきたいと思います。

まず、自分は「非常にしあわせ(自己評価点8~10点)」と感じている人の場合、「ほぼ毎日笑う」が40%、「週に1~5回程度笑う」が45%で、合わせて85%の人が笑う頻度の高いことが分かりました。幸福感の高い人は予想通り笑いと縁が深いようです。

ただ、男女別に見るとちょっと興味深い事実が分かりました。「非常にしあわせ」と感じている男性の「ほぼ毎日笑う」が33%に対して、女性は47%。なんと14ポイントもの差がつきました。「週に1~5回程度笑う」の男性は47%、女性は43%で接近していますが、「ほぼ毎日」と「週に1~5回程度」合計は男性80%、女性90%と10ポイントの開きがあります。しあわせを感じる女性は同じ男性よりもよく笑う傾向がある、ということが明らかになりました。

《 男女別 銭湯利用者の幸福感と笑う頻度 》

一方、自分は「あまりしあわせではない(自己評価点0~3点)と感じている人はどうでしょうか。「ほぼ毎日笑う」が18%(男女別でもそれぞれ18%)、「週に1~5回程度笑う」が25%(男性18%、女性36%)で、合わせて43%と「非常にしあわせ」と感じている人の半分しかいません。あまりしあわせでなくとも、女性のほうが若干笑う頻度の高いことは現れていますが、幸福感と笑う頻度はやはり直結しているようです。

次に年代別に主観的幸福感と笑う頻度を見てみました。「非常にしあわせ」と感じている人で「ほぼ毎日笑う」の項目を見ると、40代と60代が50%を越えています。それに対して50代は25%と40代、60代の半分以下なのです。20代30代は4割弱が「ほぼ毎日笑う」と答えていますから、50代の笑う頻度の落ち込みが突出していることが分かります。ただ、その50代も「週1~5回程度」笑うとする人が69%いますから、「ほぼ毎日」との合計では他の世代とそう見劣りはしません。むしろ、「ほぼ毎日」と「週1~5回程度」の合計が、30代90%、40代90%、60代86%の高さに比べ、70代以上の75%という数字が気になります。70代以降は憂鬱さが忍び寄るのでしょうか。

《 年代別 銭湯利用者の幸福感と笑う頻度 》

次に、地域別に主観的幸福感と笑う頻度を調べました。首都圏では「非常にしあわせ」と感じている人のうち「ほぼ毎日笑う」のは32%、同じく関西圏では50%、その他の地域は44%でした。非常にしあわせでほぼ毎日笑う、は関西圏の圧勝です。ところで、この連載の第2回目で紹介した、以下の分析結果をご記憶でしょうか。

「データはこの点でも興味深いものを示唆しています。銭湯と幸福感の関係性は、関西圏で顕著だということ。『非常にしあわせ』は首都圏で4ポイント、その他地域で1ポイント、利用者のほうが非利用者より割合が高いのに比べ、関西圏ではなんと10ポイントも高いのです。」

「非常にしあわせ」と感じている人で「週に1~5回程度笑う」のは、首都圏で50%、関西圏で45%、その他地域で40%でしたが、この2つを合計すると首都圏が82%、関西圏が95%、その他地域が84%。「頻繁な銭湯入浴→主観的幸福感の高さ→よく笑う」の相関は関西において極めて顕著であることが分かりました。

《 地域別 銭湯利用者の幸福感と笑う頻度 》

このアンケート調査では、各浴場に掲示してあるポスターの通り、「週1回以上銭湯に行く」人の「とてもしあわせ」が73.3%(自己評価点4~7の「まあまあしあわせ」23.3%、自己評価点0~3点の「あまりしあわせではない」3.3%)に対し、「銭湯に行かない」人の「非常にしあわせ」が45.9%と圧倒的な差のあることが明らかになっています。また、「週1回以上銭湯に行く」人の「ほぼ毎日笑う」が36.7%に対し、「銭湯に行かない」人の「ほぼ毎日笑う」27.2%と10ポイント以上の差がありました。念のために、銭湯に行かない人の主観的な幸福感と笑う頻度の関係についても示しておきます。

《 男女別 銭湯「非」利用者の幸福感と笑う頻度 》

《 年代別 銭湯「非」利用者の幸福感と笑う頻度 》

《 地域別 銭湯「非」利用者の幸福感と笑う頻度 》

男女別では、「ほぼ毎日笑う」と「週1~5回程度」の合計で、銭湯利用者の男性が80%なのに対し、非利用者の男性が66%と差がついていることが分かりました。年代別では、銭湯利用者の「非常にしあわせ」と答えた人の30代、40代、50代で「ほぼ毎日笑う」と「週1~5回程度」の合計が90%を越えているのに対して、銭湯「非」利用者の「非常にしあわせ」と答えた人は30代63%、40代85%、50代83%と、30代で特に大きな差が現れています。

全国浴場組合連合会が行った今回の調査研究以外にも、笑いに関する様々な調査データが報告されています。ある調査では「声を出してよく笑う」が男性40%、女性60%で、女性のほうがよく笑うと報告されています。世代別では「よく笑う」30代が65%、40代が50%、50代が45%です。別の調査では、小学生は1日に平均300回笑うが、70代では1日に2回程度しか笑わないと報告されています。女性のほうがよく笑う、70代は笑わない、という傾向は全浴連の調査結果と似ていますね。

ところで、なぜ年齢を重ねるにつれて笑わなくなるのか。これについては、ストレス説が有力とされています。年齢とともにストレスが増え、笑えなくなるということです。ただ、人生で最もストレスが多いのが30代、40代ともいわれ、60代、70代のほうが「笑い」の回数が少ないことはストレス以外の要因も大きいのではないかとの見方もあります。たとえば脳の機能が「笑い」と密接に関係しているのではないか、ということです。ただ、「笑い」により脳機能が高まるのか、脳の認識機能が高いことから「笑い」が促されるのか、どちらが先なのかはまだよく分かっていないようです。

最後に「笑い」と「しあわせ」に関する格言をいくつか。
ドイツのショーペンハウアー(1788~1860)
「多く笑う者は、幸福である。多く泣く者は、不幸である」

フランスのアラン(1861~1951)
「幸せだから笑っているのではない。むしろ僕は、笑うから幸せなのだ」

ショーペンハウアーの言葉もアランの言葉もまずまずですが、傑作はドイツのニーチェ(1844~1900)でしょうか。
「笑いとは、地球上で一番苦しんでいる動物が発明したものである」
同じくニーチェ
「孤独な人間がよく笑う理由を、たぶん私はもっともよく知っている。孤独な人はあまりに深く苦しんだために笑いを発明しなくてはならなかったのだ」

現代日本では、ニーチェのように「笑いを発明しなくてはならない」ことはありません。銭湯に行けばいいのです。(以下、次号)


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