新宿から西武新宿線にゆられること約30分。のんびりした風情の久米川駅にほど近い「桜湯」を訪ねた。遠くからでも目立つ「ゆ」の看板が目印だ。「荻窪で銭湯を経営していた父が、昭和28年に店を開いたんです」と話すのは、店主の大川至子(のりこ)さん。82歳というのが信じられない若々しさだ。

 住宅が建ち並ぶ現在からは想像しがたいが、創業当時、周辺は栗林だったそうだ。至子さんが高校を卒業した年に桜湯がオープンし、まだ高校に在学中だった妹さんとともに店を切り盛りするようになったという。現在もその妹さんと店を営んでおり、姉妹揃って60年のキャリアを持つ根っからの銭湯人だ。現在の建物は昭和61年に建て替えられたもの。郊外の銭湯らしく敷地が広いので、ロビー、脱衣場、浴室と全体に広々としてゆったりとした造りになっており、ダンス教室や整体などにも使われるコミュニティスペースも併設している。

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 15時開店。常連さんとともに浴室へ向かった。浴室奥の壁は珍しい馬のタイル絵が浴室を彩る。最近はガスでお湯を沸かす銭湯が増えているが、こちらは、空気の熱を利用するヒートポンプ式で井戸水を沸かす。お湯の温度が安定しており、実際の温度よりも熱く感じないので、じっくり温まることができる。熱すぎずぬるすぎず、まさに適温で心地よい湯だ。「私も閉店した後、毎日入ってるけど、よく温まって全然湯冷めしないのよ」と至子さん。

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 浴槽のショルダーマッサージはどうやって使用するのか一瞬とまどう形状だが、銀色の筒の下に肩を当てると、中から強力な水流が噴出! これは肩こり解消に効果絶大だ。隣にはジェットが噴き出るマッサージ風呂、ピリピリと刺激する電気風呂、下から気泡が出る大きなバイブラの浴槽が並ぶ。

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 これらの浴槽の隣にある小部屋の中は、壁の上部に設けられたノズルからミストが降り注ぐ。こちらの湯船は少し深くなっており、強力なジェットが体をもみほぐしてくれる。

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 そして、特筆すべきはサウナ。遠赤外線式で一般のサウナよりも温度が低いので、息苦しくない。しかし体はよく温まり、汗がたっぷり出てくる。遠くからこのサウナを楽しみにやって来る人もいるそうだ。毎週火曜日はレディースデーということで、女性はこのサウナが無料なのがうれしい(普段は200円)。平日は近所の常連さんが多いが、週末は秩父方面からハイキング帰りの人が汗を流しに寄ったり、駐車場が広い(10台駐車可)ことから遠方より車で訪れる人も多い。

 さて、現在もお店を姉妹で営む至子さんは、銭湯の仕事について「お互いこの仕事が長いから、阿吽(あうん)の呼吸で仕事が進むのがいいわね」と話す。仕事の醍醐味については「大変なこともあるけど、『いいお湯だったよ』っていわれるのが、なによりもうれしいわ。もう二人とも年だから、いつまでできるかわからないけど、体が動く限りはこの仕事を続けたいわね」としみじみ語る笑顔が印象的だった。
(写真・文:編集部)


【DATA】
桜湯(東村山市|久米川駅)
●銭湯お遍路番号:東村山市 3番
●住所:東村山市萩山町3-15-1
●TEL:042-391-0547
●営業時間:15~23時
●定休日:月曜(祝日の場合は翌日休)
●交通:西武新宿線「久米川」駅下車、徒歩6分
●ホームページ:–
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男湯のタイル絵は少し絵柄が異なる

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お湯は井戸水をヒートポンプで沸かす

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湯上がりはベンチでのんびり過ごせる(女湯)

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脱衣場のしゃれた天井(女湯)

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入り口はフロント式

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明るく広々としたロビー