最近、改装した銭湯が各種メディアに登場する機会が増えている。大田区の久が原湯も2011年8月に改装して以来、さまざまなメディアで取り上げられ、地元のお客さんのみならず遠方からも足を運ぶ人気銭湯として知られるようになった。「おかげさまで改装以来、お客さんの数は毎年増えています」と話すのは、ご主人の山岸さん。

 かつて久が原湯の周りにはたくさんの町工場があったが、現在はマンションや一戸建てに変わりつつあり、人口も年々増加している。この周辺に住む家族連れや、銭湯に縁のない若い女性にもぜひ銭湯へ足を運んでもらいたいと考えた結果、できあがったが現在の形だ。

 では、お風呂を見ていこう。

 浴室は入り口から見て左が「太陽の湯」、右が「月の湯」と名づけられ、タイルの色やレイアウトが異なる。「太陽の湯」には外気が入る黒湯温泉(ぬるめ)の独立した浴室、「月の湯」には黒湯温泉の2つの湯船(ぬるめと熱め)がある洞窟風の浴室がそれぞれ用意されている。半月ごとに男女の浴室を入れ替えるので、それぞれの趣きを楽しめる。

2_0022
3_0099

 メインとなる各浴室の中央部にあるのが、血行を促進し美容にもよいと今大人気の高濃度炭酸泉。浴室の入り口の上に大画面のテレビが備え付けてあるので、ぬるめのお湯にじっくりとつかっていても退屈しない。

 炭酸泉と隣り合わせのさら湯の広い湯船も温度はぬるめで、強力なジェットエステやボディジェット(スイッチ式)、バイブラを備えている。端のほうには足湯を楽しめるように腰掛けられるスペースもある。

4_0040
5_0034

 また、改装前からの売りである天然温泉の黒湯は、ぬる湯の湯船とは別に高温の湯船も用意。「各浴室とも熱い湯船は黒湯の一つだけにして、他の湯船は全部ぬるめです。子供さんや家族連れにお風呂を楽しんでほしいから」とご主人。

6_0106
7_0052

 そのほか、サウナもスチーム式と遠赤外線式(別料金200円)の2種類を設置。浴室にはシャンプー&リンスを設置してあるが、女湯ではメイク落とし用の洗顔フォームも用意してあり好評だ。

8_0013
9_0109

 しかし、このような充実した設備だけが久が原湯の人気の理由ではない。他にも集客のために行っているさまざまな工夫が挙げられる。

 例えば、クリスマス、バレンタインデー、ひな祭りなどのイベント。特に昨年好評だったのが、2回実施したアヒル風呂で、1500個の小さいアヒルを用意して、3つまでは持ち帰ることができるようにしたところ、女性や子供に大ウケ。あまりにもリクエストが多いため、6月に引き続き12月にも実施したところ、なんと子供だけで100人も来店! また、たくさん浮かべたアヒルの中に、番号が書かれたアヒルがいて、見つけたらフロントで景品と交換する試みも。宝探し気分が楽しめるので大好評だったそうだ。そのほかにも、健康体操や落語会なども実施しており、ほぼ毎月なんらかのイベントが開催されている。

 そして、入り口には初めてのお客さんに安心してもらえるように、店内の様子がわかる写真を掲示している。フロントには駄菓子コーナーも設置してあり、銭湯初心者から子どもまで気軽に足を運びたくなる工夫がてんこ盛りなのだ。

 こうした努力の結果、お客さんの年齢層は改装前に比べて若返り、家族連れや若い女性客が大幅に増加。赤ちゃんを連れたお客さんも増えたので、バスチェアやベビーベッドも新たに用意した。男性側でも利用できるので、利用を希望する人はフロントでお願いしよう。

10_0146
11-0121

 さて、「売り」が多い久が原湯だが、それでもご主人は「風呂屋で一番大事なのは掃除」と断言する。「口に入るもの、肌が触れるものはきれいにしておかないと」をモットーに、スタッフ一同が毎日懸命に掃除をしているだけに、浴室はどこを見ても驚くほどきれいだ。お客さんから「開店時間を早くしてほしい」「土曜日も昼からやってほしい」という要望が多いのになかなか応えられなかったのも、掃除をする体制が整わなかったからだという。

 しかし、ここで朗報。なんと15時開店だった土曜日が、2016年4月からは12時開店へ変更することが決定。さらに、平日の開店時間も15時から14時へ繰り上げるになった。お客さんの要望に応えようと努力する山岸さんの忙しい日々はこれからも続きそうだ。(※4月1日からは定休日が4・14・24日から毎週月曜に変更されるので注意)

 久が原湯からは、関東最古の五重塔や多宝塔など国の重要文化財を多数擁する古刹・池上本門寺も近い。桜の名所としても知られ、400年の歴史を持つ五重塔と咲き誇る桜とのコントラストが素晴らしいので、開花時期に合わせて足を運んでみては。なお、2016年は4月2日・3日に「本門寺春まつり」が開催される。

 また、西馬込駅の東方面には、大正末期から昭和初期にかけて多くの文士・芸術家が住んでいたことから「馬込文士村」と呼ばれた地域が広がる。住居跡には記念館や居住案内板があるので、晴れた日に散策するのもおもしろい。
(写真・文:編集部)


【DATA】
久が原湯(大田区)
●銭湯お遍路番号:大田区 54番
●住所:大田区久が原2-14-15
●TEL:03-3754-4452
●営業時間:15-24時(日曜のみ12〜24時)※2016年4月1日からは平日・祝日14〜24時、土曜・日曜12〜24時
●定休日:4・14・24日(日曜の場合は翌日休)※2016年4月1日からは毎週月曜休
●交通:東急東横線「田園調布」駅よりバス。「安詳寺」下車、徒歩1分/都営浅草線「西馬込」駅から徒歩14分/東急池上線「池上」駅から徒歩15分
●ホームページ:
http://ota1010.com/explore/%E4%B9%85%E3%81%8C%E5%8E%9F%E6%B9%AF/
銭湯マップはこちら

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、予め御了承ください。

12_0010

清掃が行き届いている浴室

13_0115

サウナの後は水風呂でさっぱり

14_0007

脱衣場へはドライヤーの持込可(無料)。
備え付けドライヤーは3分20円

15_0129

広告入りのタオルやマットは珍しい

16_0143

湯上がりはロビーで一休み

17_0154

モダンな外観と大きな看板が目印