2023/10/18

トピック

「銭湯で働きたい」「銭湯を経営してみたい」と考える未経験の方を対象に、銭湯の経営や仕事の魅力を伝えつつ、実際の業務を体験してもらい、将来的に銭湯での就業につなげることを目指す「第3回 銭湯の担い手養成講座」のステージ1とステージ2が2023年6~7月に開催されました。

■浴室の掃除体験、銭湯経営の収支についての講義

6月に2回実施された「ステージ1」には、計16名(1回8名)の定員に対して約100名の申し込みがあり、銭湯の仕事への関心の高さがうかがわれました。

会場となった府中湯楽館 桜湯(府中市)は、約2年の休業を経て2020年1月に再開した銭湯です。講座当日は開店準備全般の説明、銭湯全体の見学、浴室の掃除、銭湯経営に関する講義などが行われ、講師は桜湯オーナーの佐伯雅斗(まさとし)さんが務めました。

店内の見学では、脱衣場を大正ロマンを感じさせる雰囲気にリニューアルした狙い、浴室では薬湯や白湯などそれぞれの浴槽の特徴、バックヤード見学では湯を沸かす仕組みや水質管理のための塩素添加などについて、それぞれ説明を行いました。

浴槽の仕組みについて説明

 

お湯を沸かす仕組みを学ぶ

 

見学の後は、清掃作業へ。男女の浴室各4名ずつに分かれて清掃作業に取り掛かりました。気温・湿度ともに高い浴室での作業のため、参加者はみな汗だくとなりながらも、熱心に取り組んでいました。

桶やいす、鏡まで洗う

 

深い浴槽も丁寧にこすり洗いをする

 

清掃後は休憩をはさんで、銭湯経営に関する講義がスタート。東京の銭湯利用者数の推移から始まり、桜湯を再開させるために掛かった費用、リニューアル後の収支、新型コロナの影響、サウナブームの効果、銭湯の経営形態や物件の探し方など多岐にわたりました。

利益が出ない状態だった桜湯を、経営を引き継いで以来どのように改善していったのかを具体的に解説する内容に、受講生は興味津々。質疑応答の時間には活発に質問が挙がっていました。

モニターを見ながら、経営についての講義

 

講師の佐伯さんは最後に「銭湯はお客さんがたくさん入っても経費はそれほど増えないので、損益分岐点を超えると利益が上がりやすい。入るようになるまではいろいろな工夫が必要で大変だが、商売としては魅力的な業種である」と語りました。

6月24日の参加者の皆さん

 

6月25日の参加者の皆さん

 

お湯を沸かす仕組みについて学ぶ「ステージ2」

7月29日には、第1回~第3回のステージ1の修了者から19名が参加してステージ2が開催されました。会場は武蔵村山市の砂川湯、立川湯屋敷 梅の湯、立川市・松見湯で、それぞれ異なる湯沸かしシステムについて学びました。講師はステージ1に引き続き、立川湯屋敷 梅の湯のオーナーでもある佐伯雅斗さんです。

最初の会場となった砂川湯

 

砂川湯では、昭和の頃より長らく湯を沸かすのに使われてきた「平釜」の構造を中心に学びました。長さ4m以上ある煙道を燃焼ガスが通ることで湯を沸かす、銭湯ならではの独特の釜の構造や、薪の燃やし方、掃除方法などの説明を受けた後、参加者は実際に薪をくべる体験も行いました。また、砂川湯では現在は使われていないものの、可動式バーナーを設置することで薪の代わりに重油が燃やせるという仕組みや、重油の貯蔵庫、排水の熱を利用して井戸水の温度を上げる温水器、釜の掃除道具など、普段はなかなか目にすることができない昔ながらの銭湯のバックヤードを、受講生たちは興味深げに見学していました。

薪でお湯を沸かす平釜の仕組みを学ぶ

 

炎天下の中、重油の貯蔵庫や薪の保管方法などを説明する佐伯さん

 

排水の熱を利用して井戸水の温度を上げる温水器の仕組みを学ぶ

 

脱衣場では質疑応答の時間も設けられた

 

続いてバスで立川湯屋敷 梅の湯へ移動。こちらは平釜を使用する砂川湯とは異なり、お湯を沸かす装置としてボイラーが設置されており、すべてが全自動で制御されています。ろ過器、温水器、塩素添加装置などは地下に設置してスペースを有効活用しているほか、広さを確保するため、男女の浴室を1階と2階に分けるなど、砂川湯とは全く異なる構造を受講生は皆、興味津々の様子でした。

梅の湯のバックヤード

 

梅の湯のお湯の循環する仕組みを学ぶ

 

梅の湯での講義の後は、再びバスで2022年4月にリニューアルオープンした松見湯へ移動。

 

リニューアルして1年余りの松見湯

 

こちらの湯沸かしシステムには、家庭でよく使われている「瞬間湯沸かし器」が採用されています。店の裏には瞬間湯沸かし器が5台設置されており、浴室のお湯の使用量に応じて、稼働する台数が増減するという、最新のシステムです。

「瞬間湯沸かし器」を採用した最新の湯沸かしシステム

 

お湯を沸かして貯めておく平釜やボイラータイプよりも、熱効率に優れる最新の湯沸かしシステムとバックヤードを案内された受講生は、先に見学した松見湯、梅の湯とは全く異なる仕組みを熱心に観察していました。

広々とした松見湯のバックヤード

 

松見湯のバックヤードと店内を見学した後、佐伯さんより受講生に修了証が手渡され、ステージ2の講座は終了。

受講生からは「お湯を沸かすにもお店によっていろいろシステムが違うことが学べて勉強になりました」「薪をくべる体験ができてよかった」「薪は費用はかからないが、手間が大変そう」などの声が聞かれました。

ステージ2に参加した皆さん

 

講座の最終回となるステージ3は、2023年11月に開催される予定です。

銭湯の担い手養成講座の特設サイトはこちら