2022/09/13

トピック

「銭湯で働きたい」「銭湯を経営してみたい」と考える未経験の方を対象に、銭湯経営や仕事の魅力を伝えつつ、実際の業務を体験してもらい、将来的に銭湯での就業につなげることを目指す「第2回 銭湯の担い手養成講座」のステージ1とステージ2が6月から8月にかけて開催されました。

■浴室の掃除や銭湯経営の収支について学ぶ「ステージ1」

6~7月にかけて3回実施された「ステージ1」には計24名(1回8名)の定員に対して約90名の申し込みがあり、銭湯の仕事への関心の高さがうかがわれました。

会場となった府中湯楽館 桜湯(府中市)は、約2年の休業を経て2020年1月に再開した銭湯です。講座当日は開店準備全般の説明、銭湯全体の見学、浴室の掃除、銭湯経営に関する講義などが行われ、講師は桜湯オーナーの佐伯雅斗(まさとし)さんが務めました。

男湯の脱衣場が講義会場

 

店内の見学では、脱衣場を大正ロマンを感じさせる雰囲気にリニューアルした狙いやその効果、浴室では薬湯や白湯などそれぞれの浴槽の特徴、バックヤード見学では湯を沸かす仕組みや水質管理のための塩素添加などについて、それぞれ説明を行いました。

浴室の見学風景

 

バックヤード(機械室)

 

見学の後は、実際の清掃作業へ。最初に桜湯の店長からカラン、壁、鏡、浴槽、床の清掃について基本的な指導を受けたあと、男女の浴室各4名ずつに分かれて清掃作業を行いました。気温・湿度ともに高い浴室での作業のため、参加者はみな汗だくとなりながら、熱心に取り組んでいました。

桜湯の店長が掃除の見本を見せる

 

デッキブラシで磨き、壁や鏡を洗い流す

 

浴室の清掃後は、休憩をはさんで銭湯経営に関する講義がスタート。前年度のステージ1の参加者から「銭湯経営に関する講義をもっと聞きたかった」という要望が多かったため、今年度は講義の時間を多く配分しました。

講義内容は東京の銭湯利用者数の推移から始まり、桜湯を再開させるために掛かった費用、リニューアル後の収支、新型コロナの影響、サウナブームの効果、銭湯の経営形態や物件探しなど多岐にわたりました。利益が出ない状態だった桜湯を、経営を引き継いで以来どのように改善していったのかを具体的に解説する内容に受講生は興味津々。質疑応答の時間には活発に質問が挙がっていました。

講師の佐伯さんは最後に「お客さんの数が増えても固定費が変わらないため、お客さんが入るようになれば利益が上がりやすい。入るようになるまではいろいろな工夫が必要で大変だが、商売としては魅力的な業種である」と、銭湯経営の魅力を語り、講義を締めくくりました。

銭湯経営について熱く語る桜湯オーナーの佐伯さん(左)

 

リニューアル費用や損益分岐点などを具体的に解説

 

質問する参加者

 

6月25日に参加した皆さん

 

6月26日に参加した皆さん

 

7月8日に参加した皆さん

 

■お湯を沸かす仕組みについて学ぶ「ステージ2」

8月6日には、ステージ1に参加した24名の中から、12名が参加してステージ2が開催されました。会場は調布市・梅の湯と立川市・松見湯で、銭湯の湯沸かしシステムについて学ぶ内容です。講師はステージ1に引き続き、立川湯屋敷 梅の湯のオーナーでもある佐伯雅斗さんが務めました。

会場となった調布・梅の湯

 

調布・梅の湯では、昭和の頃より長らく湯を沸かすのに使われてきた「平釜」の構造を中心に学びました。長さ4m以上ある煙道を燃焼ガスが通ることで湯を沸かす、銭湯ならではの独特の釜の構造をはじめ、燃料は雑燃料(廃材等)のほか、雑燃料がない場合は可動式バーナーを設置することで重油が燃やせるという仕組みについて説明を受けました。

釜の焚き口と煙道

 

煙道をブラシで掃除する

 

薪置場を見学

 

持ち込まれた木材の保管や整理方法を説明

 

排水の熱を利用して井戸水の温度を上げる温水器、重油の貯蔵庫、釜の掃除道具など、普段はなかなか目にすることができない昔ながらの銭湯のバックヤードを、受講生たちは注意深く見学していました。

熱交換を行う温水器の構造を学ぶ

 

屋内側から平釜の構造を学ぶ

 

浴室の見学風景

 

当日は薪をくべる体験を予定していましたが、お店の都合によりこの日は中止となったため、急遽ロビーでQ&Aコーナーを設け、湯沸かしに関するさまざまな質問が投げかけられました。

この日は薪をくべる体験の代わりにQ&Aコーナーを開催

 

■最新式の湯沸かしシステムを学ぶ

梅の湯での講義の後は、2022年4月にリニューアルオープンしたばかりの松見湯(立川市)へ向かいました。

こちらの湯沸かしシステムには、家庭でよく使われている「瞬間湯沸かし器」が採用されています。店の裏には瞬間湯沸かし器が5台設置されており、浴室のお湯の使用量に応じて、稼働する湯沸かし器が増減するという、最新のシステムです。

お湯を沸かして貯めておく平釜やボイラータイプよりも、熱効率に優れる最新の湯沸かしシステムとバックヤードを案内された受講生は、先に見学した調布・梅の湯とは全く異なる仕組みを興味深げに見学していました。

松見湯では効率のよい瞬間湯沸かし器を採用

 

平釜との違いに驚く受講生の皆さん

 

整然と整理されたバックヤード

 

浴室ではタイルや照明の特徴を説明

 

松見湯のバックヤードと店内を見学した後、佐伯さんより受講生に修了証が手渡され講座は終了。

受講生からは「従来の平釜と最新式の瞬間湯沸かし器について学べとても勉強になりました」「湯沸かしシステムの違いによる費用の差についても知りたかった」「薪をくべる体験が中止になったのは残念だった」などの声が聞かれました。

ステージ2に参加した皆さん

 

講座の最終回となるステージ3は、2022年11月に開催される予定です。

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