東京スカイツリーの開業により脚光をあびる押上駅。その隣、曳舟駅周辺も近年の大規模な再開発でタワーマンションが建ち並ぶようになり、かつての下町のイメージを変貌させつつある。そんな町の変化を駅の向こう側から見てきたのが、東武伊勢崎線「曳舟」駅から徒歩1分の好立地にある「良の湯」だ。

 タワーマンションが立ち並ぶ曳舟駅の東側と異なり、「良の湯」がある駅の西側は、路地に商店と住宅が連なるいかにも下町らしい風景が広がる。その一角にある「良の湯」の前には、開店前にもかかわらず自転車がずらり。店の脇のほうにも開店を待ちわびる人が大勢いるようだ。

「今日は65歳以上は半額で入れる「すみだ家庭の日」(毎月25日実施、要入浴証)だから、いつもよりお客さんが多いんだよ」と話すのは、ご主人の伊藤宏さん。元は自動車の整備士だったが、縁あって銭湯を経営するようになって40年以上経つ。現在は奥様と息子さんの3人で店を営んでいる。

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 この建物は昭和27(1952)年に建てられ、平成元(1989)年に中普請を行って現在に至る。玄関のシャッターに描かれた富士山は故・早川利光絵師の手によるもので、シャッターに描かれた早川さんの絵はかなり珍しいのではないだろうか。

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 脱衣場の天井は、格子状に組まれた格天井で、中には鳳凰二羽が対になった紋様入り。入浴マナー注意の貼り紙もなくすっきりした印象の脱衣場だ。

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 浴室の壁を彩るのはモザイクタイル。男湯はサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジだそうだが、曳舟という場所柄、どことなく隅田川を連想させる。女湯は海原を進むヨットで、どちらの構図も水と湯船がつながる構成だ。

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 湯船は深浅一つずつの、昔ながらの東京スタイル。浅くて広い湯船のほうはバイブラ、電気風呂、水枕付きの寝風呂。深くて小さい湯船は水枕付きのジェット。11月から4月の間は日替わりで薬湯を実施する。「夏の間に薬湯をすると “温まりすぎて熱い” ってお客さんに言われちゃうんだよ。だから薬湯は冬の間だけね」とご主人。

 ちなみにお湯は、地下28mから汲み上げた井戸水を使用。お茶を入れてそのまま飲めるほど質がいい水を薪で沸かしている。井戸水を薪で沸かす下町銭湯と来れば、お湯は熱そうだが……実際につかってみればいたって入りやすい温度。ぬるめなので家族連れでも安心だ。

 この日、取材にうかがった夕方の時間帯は高齢のお客さんが多かったが、駅から徒歩1分という立地から、勤め帰りに立ち寄るお客さんも多い。手ぶらセットも用意してあるので、タオルや石けんがなくとも気軽にひとっ風呂あびることができるのがうれしい。周辺には居酒屋も多いので、湯上がりに一杯ひっかける場所には困らない。

 東京スカイツリーも徒歩圏内。路地に商店や住宅が軒を連ねる下町風情と、タワーマンションやショッピングセンターが隣り合わせという、今の東京らしい風景が見られる曳舟駅周辺。勤め帰りや、休日の散歩ついでに立ち寄ってみたい。
(編集部)


【DATA】
良の湯(墨田区|曳舟駅)
●銭湯お遍路番号:墨田区17番
●住所:墨田区向島2-15-6
●TEL:03-3611-0811
●営業時間:15時15分~23時30分
●定休日:水曜
●交通:東武伊勢崎線「曳舟」駅下車、徒歩1分
●ホームページ:–
銭湯マップはこちら

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良の湯の煙突と東京スカイツリーの2ショット

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待ち構えたお客さんが開店と同時になだれこむ