西荻窪駅から徒歩約14分。魅惑的な商店街を抜け、青梅街道を渡ってすぐ、閑静な住宅街の一角に、地元の人々に昔から愛される銭湯がある。
現在三代目の女将さん、久留島章子さんが切り盛りしている秀の湯の歴史は古く、少なくとも昭和6(1931)年にはこの地で営業していたのことだ。

 

●種類豊富な浴槽と露天の岩風呂

秀の湯のお湯は、地下80mから汲み上げた井戸水を使用。さまざまな種類の浴槽があり、デジタル温度計でお湯の温度も一目瞭然。あつ湯からぬる湯までそれぞれ堪能できるのもうれしい。

薬草湯は日替わりで、この日は10種類の生薬をブレンドした「健美泉」。美肌効果が期待できるのだそう。疲れと脂肪をほぐしてくれる3種類のジェット(座風呂、ハイパージェット、ボディージェットバス)を備えた浴槽もある。

日替わりの薬草湯。この日は「健美泉」

3種類のジェットが並ぶ浴槽

奥にある露天風呂は、保温効果が高い高濃度人工炭酸泉。体の芯からじんわりと温まり、ポカポカ感がずっと続く。また、頭上に屋根がないので、湯に浸かりながら直に空を眺めることができるのだ。時折吹く心地よい風を感じながら、頭が空っぽになる感覚がたまらない。
晴れた日にはお月様を眺めながらの入浴も楽しめ、昨秋は「月見風呂」と銘打って、露天から月が見える時間帯をまとめた「月見風呂カレンダー」をインスタグラムで紹介したそうだ。

昨秋、インスタにアップされた月見風呂カレンダー

男湯側の露天風呂。ベンチでひと休みしてもよし。外気浴にもうってつけ

●女将さんならではのアイデアと感性あふれる空間

秀の湯の脱衣場には、オリジナルの足拭きスペースがある。
風呂上がりにきちんと拭いたつもりでも、まだ完全に拭ききれていないこともしばしば。そこで女将さんが思い付いたのは、浴室を出たところから延長線上に足拭きマットを広く敷くこと。それがベンチの下にある緑のマットだ。しかも、つまずいたりズレたりしないように、フローリングとの段差をなくした秀の湯特注だそうだ。

マットは着脱可能のため常に清潔に保つことができる

さて、昨今のサウナブームで、特に男湯はサウナが大人気という。現在はコロナ禍のため、対策として作ったソーシャルディスタンスマークにも優しい心くばりを感じる。

男湯サウナ室。「×」マークを手縫いにすることにより、柔らかい空気感に

店内いたるところにある花や、入り口横のディスプレイやのれんは、季節ごとにテーマに沿ったものが飾られ、訪れる人々の目も楽しませてくれる。日常の中に季節を感じることができる優しい空間だ。

新年のお祝いにふさわしい連獅子の日本人形は女将さんのお母様作(取材:1月)

縁起のいい福助さんと十二支ののれん。男湯側は色違い。こちらは女将さんの手作り

某大企業の社長秘書を勤めた経歴を持つ女将さん。過度になりすぎることなく、心地よく過ごせるさりげない心くばりは、その時培った経験も大きいのだろう。なお、駅から遠いため、車でも来やすいようにと駐車場を13台分も用意しているなど、遠方からの来客にも配慮が行き届いているのもうれしい。

 

●これからも“清潔感のあるお風呂屋さん”を目指して

銭湯で生まれ、幼い頃から番台に上がってお手伝いをしていたという、笑顔が魅力的な女将さん。
二代目のお父様が休みなく働いているのを見ていた影響で、休みの日でも携帯電話は手放せない。「貧乏性なのよね」と朗らかに話す中にも、家業を守っている芯の強さを感じる。

気さくでおおらかな女将さんと話していると時間を経つのも忘れてしまう

秀の湯といえば、看板のかわいいロゴタイプが目を引く。実はこれ、女将さんがご自身でデザインしたとのことで、デザインの経験は全くなく、独学で作ったというから驚きだ。

看板の文字はお湯の気泡をイメージした「氵」(さんずい)部分がポイント

「照明を落とした温泉施設っぽいのではなく、スカッと明るい照明で、毎日来てもらえるような、“明るい清潔感のあるお風呂屋さん”を目標としているんです」と語る女将さん。

白を基調とした浴室は明るく、隅々まで掃除が行き届いている

日常の中で季節の移ろいを感じ、体も心もあたたかくなれる銭湯。今度は満月の夜に来てみよう。
(写真・文:銭湯ライター 荒木久美子


【DATA】
秀の湯(杉並区|西荻窪駅)
●銭湯お遍路番号:杉並区 4番
●住所:杉並区桃井4-2-9
●TEL:03-3399-6112
●営業時間:15時半~25時半
●定休日:木曜
●交通:中央線「西荻窪」駅下車、徒歩14分
中央線「西荻窪」駅、もしくは「荻窪」駅よりバス。「桃井4丁目」下車、徒歩1分
※駐車場は13台分用意
●ホームページ:https://hidenoyu.wixsite.com/index
Twitter:@hidenoyu_sento
Instaglam:hidenoyu_sento 
銭湯マップはこちら

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。