新宿駅から山手線に揺られ20分。西日暮里駅で日暮里・舎人ライナーに乗り換え2駅、熊野前駅で下車。都心から好アクセスとはいえないこの下町エリアに、まさかの巨大銭湯がありました。

堂々としたコンクリートの建物

素朴な商店街の途中に突如現れる、コンクリート造りの四角い大きな建物が今回ご紹介する「尾久ゆ~ランド」。下足箱に靴を入れ、中に入ってまずびっくり。なんですか、この休憩室の広さは!!

 

■レコードまで聞ける! ゆったりくつろげる広い休憩室

2階まで吹き抜けのため、天井が高い

フロントの横にあるのが、休憩エリア。大きなソファや椅子、テーブルなど、まるでリビングのような空間が広がり、その間になぜかピアノやギター、アンプ、スピーカーなどの音楽機材、そして大量のレコードが並ぶ。

銭湯前に筋トレもできる……!

レコードは好きな曲をかけてもOK

なんと、ここにあるものは全て、ご近所の方からいらなくなったものを譲り受けたのだとか。「気がついたら、こんなに集まっちゃった」という番頭の加古直(ただし)さん。もともと音楽関係の仕事をしていて、8年ほど前に番頭を継いで以来、時折ここでライブイベントをやるほどの音楽好き。

 

■本物の空とつながる、ペンキ絵の青い空

さて、本題の浴室はというと、日替わりで男女入れ替え制。偶数日は女湯3階・男湯1階、奇数日は男湯3階・女湯1階となっている。

まずは1階浴室からご紹介。浴室に入って、またびっくり。広すぎる……! 今から20年ほど前のスーパー銭湯ブームの頃に建て替えられたこともあり、洗い場も内湯もかなり余裕のある造り。

井戸水を使用したお湯は、40~41℃に設定

幅広い年齢層が気持ちよく入れる温度の内湯は、大きな窓から光が差し込みかなり開放的。コンクリート造りのため、どことなく地下室のようにも感じられ、なんとなくアンダーグランドな雰囲気も漂う。

洗い場は全てシャワー付きで髪も洗いやすい!

味のある無骨な壁がいい風合い

そして1階浴室の目玉はなんといっても、この露天風呂! 富士山のペンキ絵がある銭湯は数多あれど、屋外に描かれている銭湯はなかなかないのでは?

ペンキ絵は昨年冬に描かれたばかり

本物の空と一緒に見上げるペンキ絵、かなりレア

 

■スペース余りすぎ! と、ツッコみたくなる秘密の屋上

続いて3階浴室へ。

3階の洗い場もこれまた広~い

1階同様、ジェットバス完備の内風呂

1階よりもさらに広く感じられる3階浴室には、これまた太陽の光が気持ちよく差し込む。

キュートな富士山が水風呂でお出迎え

ガラスに囲まれ、陽の光が差し込む

露天はないものの、大きなガラス窓に囲まれた内湯では、窓を開けておくと外気を感じられる。

屋上に出て外気浴も可能

屋上にも出られるようになっており、ラジオ体操や、鬼ごっこができそうなくらい広い。荒川区にこんな屋上を持つ銭湯があったとは。何度も言うが広すぎる……!

 

■サウナー必見! 広すぎる外気浴スペースと冷たい水風呂

2019年はサウナブームが加速した年だったが、尾久ゆ~ランドもサウナーにぜひおすすめしたい銭湯だ。

15人くらいは座れそうな1階のサウナ

屋根裏部屋っぽくも感じられる3階のサウナ

1階、3階ともにガスストーブ式のドライサウナでテレビ付き。湿度も程よくしっかり汗が出る。気になる温度は、男湯の時は90℃、女湯の時は82~83℃くらい。

そして水風呂は、井戸水をぜいたくにもかけ流し。加古さん曰く「壊れているかも」という温度計だが、この日は16℃を示していた。体感でも17℃台なのでは? というほど、しっかり冷たい水風呂がありがたい!

サウナの基本の楽しみ方は、サウナ→水風呂→外気浴。これを1セット、もしくは3セット程度繰り返した後に訪れる究極のリラクゼーション状態。それこそが「ととのう」とサウナーが呼ぶ、至福のリラックス、恍惚状態なのである。つまりサウナ、水風呂の温度はもちろん、外気浴ができるか否かということも、とっても重要な問題なのだ。

1階露天スペースに設置された「ととのい椅子」

3階屋上の「ととのい椅子」では、見上げれば空

そう考えた時、見てください。この最っっ高の外気浴エリア。ペンキ絵の富士山と空を見ながら外気浴できる1階。そしてだだっ広い屋上で、空を見上げながらととのえる3階。

都内23区の銭湯サウナでは、ゆったり外気浴ができる銭湯はかなり貴重。だからこそ、この素晴らしい「ととのい椅子」にサウナ狂の筆者は大興奮だった。

 

■「一工夫ある銭湯」にして人をもっと集めたい

ところで、番頭の加古さんは、もともとご実家が銭湯だったわけではない。世田谷区の小学校時代からの友人一家がこちらの銭湯を経営しており、「なんとなく暇だったから」というノリで番頭を引き受け、今に至るとのこと。

お伝えしてきたようにかなり広く、スペースが正直余っているともいえるほど(笑)、ゆったりした尾久ゆ~ランド。せっかくの広さを生かして、今後は新しい取り組みや一工夫を加え、一度来たらまた来たくなる銭湯にしていきたい、と語る加古さん。

今後、月に1度はやっていきたい、という1階休憩室でのライブイベントも、絶賛出演者募集中!

なお、1~2年以内には、大規模な改装をして生まれ変わる予定でもあるというから、今後の更なる進化が見逃せない。

 

■久しぶりの友人と、飲みに行くみたいな気軽さで若い人にも銭湯に来て欲しい

最近は若い人たちが友人同士で来ることも増えたそう。久しぶりに集まって、飲み会をするのももちろん最高だけれど、まずはみんなで銭湯に来て汗を流し、大きなお風呂に入って温まる。そして、サウナでととのうことに挑戦してみる、そんな休日もたまにはいいのでは? 尾久ゆ~ランドは、そんな集まりにもぴったりな、あったかくて広~い銭湯だ。

(写真・文:銭湯ライター 林田紗央莉


【DATA】
尾久ゆ~ランド(荒川区|熊野前駅)
●銭湯お遍路番号:荒川区 6番
●住所:荒川区東尾久5-27-5
●TEL:03-5692-1504
●営業時間:15~25時
●定休日:水曜
●交通:都電荒川線/日暮里・舎人ライナー「熊野前」駅下車、徒歩7分
●ホームページ:http://arakawa-sento.jp/尾久ゆ~ランド
銭湯マップはこちら

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

フロントには金魚やベビーザリガニも

大きな「ゆ」の看板がトレードマーク