今回の取材先は、東急池上線・旗の台駅と長原駅、東急大井町線の荏原町駅、と3つの駅からアクセスできる中延記念湯。実は筆者、生まれも育ちも池上線沿線。このエリアは人一倍想い入れが強いので、自然と取材にも力が入ります!!

中延記念湯は過去に何度かお邪魔させていただいたことはあるが、リニューアル(2020年3月)してからは初訪問。

久しぶりの訪問を快く出迎えてくれたのが、2代目店主、御年79歳の木村佶(ただし)さんと長男の裕之(ひろゆき)さん。今回のインタビューを通じ、木村さん親子の進取の気性を言葉の端々から垣間見る事ができた。

――まずは中延記念湯の歴史を教えてください。
戸越の本店が発祥で、系統店舗も7軒ありました。ここ中延記念湯は1964(昭和39)年、東京オリンピックの年に先代が創業しました。

――店主はいつから中延記念湯に?
先代の後を継ぐために、川越の銭湯で約10年間、27歳まで修業しました。それから79歳の現在に至るまで、約50年間中延記念湯を経営しています。

――長い歴史がありますが、とても清潔感にあふれ、設備も充実してますね。
実は過去2回ほど大掛かりなリフォーム、修理をしております。平成15年に番台からフロントに変更し、サウナと露天風呂も作りました。さらに今年の2月から3月にかけて1ヵ月お休みをいただき、リフォームを行いました。タイルや床も張り替えましたが、一番力を入れたのはやっぱり湯船ですね。新しく電気マッサージ風呂と白湯、寝風呂、座風呂、9月には「湯とん」(※湯船の中に設置される機械式マッサージ器)も完成します!

お風呂はなんと9種類! タイルは暖かいピンク色

人気の連峰の湯(白湯)

押す、揉む、たたく、の3種類が楽しめる人気の電気風呂

――中延記念湯の特徴を教えてください。
休みがないということですね。それと夜は25時まで営業しています。タオルの無料貸し出し、シャンプーリンス、ボディソープの備え付けがあるので、飛び込みで来ていただくこともできますよ!

――ちょっと待ってください。さらっとすごい発言連発してます!!(汗) 一つずつ詳しく教えてください。まずは年中無休ってすごくないですか?
元旦だけ休みをもらってますが、基本年中無休です。サラリーマンである長男も土日は手伝いに来てくれるし、アルバイトさんも入れて4名で営業しています。また、これまでは薪や廃油でお湯を沸かしていたのを、2018年10月からガスに切り替えました。重労働はかなり減ったので、これでも昔に比べたら楽になりましたよ。なので、閉店時間も24時30分だったのを25時までに延ばしました。「来年は元旦も営業する」とうちの家内も息巻いているよ(笑)

――営業体制だけでも頭が上がらないのですが、その上にタオルの無料貸し出しですか?
「タオル貸して」というお客の声が多く、買ってもらうのも申し訳ないから、無料で貸し出しすることにしました。今は1日50人くらいですかね。またシャンプーリンス、ボディソープやドライヤーも無料提供しております。いつでも飛び込みで来てください!

――あとはホームページも独自に制作されているみたいですが?
今の時代、やはり最初は「ウェブで検索する」というのも大いにあるので、15年前、独自にホームページを立ち上げてみました。インバウンドに向けて英語版も制作してます。ホームページの反響は良好で、それまで来店されるお客さんは近所に住んでいる方が多かったのですが、今では五反田や大森などのエリアから来られる方も増えたように感じます。

中延記念湯ホームページ
http://www.nakanobukinenyu.com/

――ペンキ絵はあまり見慣れない景色ですね。
7年前に中島絵師の故郷である福島の阿武隈川の上流と、富士山を描いてもらいました。現実には一緒に眺めることができない景色です。特に、お湯に浸かりながら見上げる阿武隈川はとにかくお客さんに好評ですね。

お客に人気のペンキ絵、阿武隈川上流

――最後に中延記念湯の楽しみ方を教えてください!
今年の3月にリニューアルオープンしました。特にお風呂が9種類と、とにかく豊富です。全種類順番に入って、たとえ3時間滞在していただいてもウチは大歓迎です! 老若男女問わず「いい湯だったよ~」と言われるのが最高の喜びなので。また、男湯女湯が毎週入れ替わるので、見どころである露天風呂にある滝や、脱衣場にある子供の乗り物遊具など、週替わりで楽しんでください。ぜひご来店をお待ちしております!

露天風呂と滝。池には亀が優雅に泳いでいる

子供用遊具①

子供用遊具②

――エピローグ
圧倒的な設備の充実に加え、お客様への気遣いが随所に見られる銭湯。まさに「スーパー」な銭湯だった。一度行ったらファンになること間違いなし。胸を張っておすすめしたい!

また年中無休で営業時間も長いので、くれぐれも店主にはお身体をご留意いただき、たくさんの皆さまに安らぎを与える場として、この地で営業を続けて欲しい。

――最後に余談
店主のお孫さんは、現在箱根駅伝を目指す中学生。将来は「銭湯をやるよ!」と言っているらしい。もしかしたら近い将来「史上初の駅伝経験者が経営する、さらにスーパーな銭湯」が誕生するかもしれない、と筆者なりにワクワクした妄想をしながら帰宅の途についた。
(写真・文:銭湯ライター 工藤 亮

※動画でも中延記念湯を紹介しています。

【DATA】
中延記念湯(品川区|旗の台駅)
●銭湯お遍路番号:品川区 20番
●住所:品川区旗の台4-11-2
●TEL:03-3781-3095
●営業時間:14~25時(日祝10~25時)
●定休日:無休
●交通:東急池上線「旗の台」駅下車、徒歩5分
●ホームページ:http://www.nakanobukinenyu.com/
銭湯マップはこちら

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

天井が高く広々とした脱衣場

汗が噴き出るスチームサウナも完備

サウナ後はやっぱり水風呂へ

広々とした待合室。湯上がりの一杯はここで!

感染症対策にアクリル板、消毒液、検温器