今回の取材先は、北区志茂にある「HOTランドみどり湯」。
東京メトロ南北線志茂駅から徒歩2分、JR赤羽駅からは徒歩10分ほどの場所に位置しており、ちょうど今年(2022)5月にリニューアル25周年を迎えたのこと。

みどり湯外観。開店と同時に多くのお客様が詰めかけていた

なんといってもこちらの銭湯、とにかく設備が充実している! 露天風呂が2つ、広々とした各種内風呂、さらにサウナ・水風呂・休憩エリアと、サウナーも大満足の充実した設備を取りそろえている。
極めつけは、湯上がりに楽しめる飲食コーナー。軽食(ゆで玉子、味玉、冷奴)、おつまみ、お酒、各種アイスクリームなどを提供し、地域の憩いの場となっている。またお子さん連れの家族にも楽しんでもらえるように駄菓子コーナーまで設置されており、もう非の打ち所がない! こんなすてきな銭湯に取材で伺えるなんて……ライター冥利に尽きます!

広々とした飲食コーナー

子供も大喜びの駄菓子コーナー

実は筆者は北区エリアにお邪魔したことがほぼ無かったので、今回は新しい土地に足を踏み入れるドキドキとワクワクでみどり湯を初訪問した。

そんな筆者を快く迎えてくださったのは、3代目の店主ご夫妻。今回の取材を通じ、一見華やかなみどり湯さんからはまったく想像がつかないほどの、ご苦労や銭湯に対する思いに触れることができた。2時間弱、お二人から貴重なお話を聞かせていただいたなかから、その一部を抜粋して、インタビュー形式で写真と共に皆様へお届けしていこうと思う。

 

――まずはみどり湯の歴史を教えてください。
みどり湯としては80年近くの歴史があります。初代が昭和20年代の終わりにこの土地で銭湯を始め、我々で3代目になります。先代から引き継いだ25年前に、思い切って全面リニューアルを行いまして、そのタイミングで「みどり湯」から「HOTランドみどり湯」に屋号も変えました。

――全面リニューアルということですが、どのように変わったのでしょうか?
もともとは平屋で、熱湯とぬる湯の浴槽だけのシンプルな銭湯でしたが、新しいことを取り入れたいという思いで、「ミニ健康ランド」をコンセプトにして、豊富な種類のお風呂とサウナを備え、脱衣場を広く取り、飲食可能なくつろげるスペースを作りました。

そのために設計士とさまざまな形態のお店を視察しましたね。当初は1階を駐車場、2階に風呂を持ってこようと思ったのですが、先代から「水回りや機械は1階で平らなところに設置したほうがいい」というアドバイスをもらい、その通りにしました。実際に日々の掃除や機械メンテナンスなど、運営・経営する側になってみると、先代のアドバイスのありがた味を感じております。

豊富な種類の内風呂

高温のドライサウナ

サウナ室を出てすぐのところにある水風呂

サウナ・水風呂・休憩エリア(上写真)が完璧な導線で、サウナーも大満足!

――代替わりのタイミングで全面リニューアル、しかも健康ランドの要素を入れた銭湯という斬新なアイデア。当時は結構思い切った判断だったのではないでしょうか?
古い銭湯ではこの先どうなるか分からない。とにかく、自分の代でみどり湯を絶対に終わらせたくないという思いが先行し、全面リニューアルに踏み切りました。
私(ご主人)の父や先々代も、銭湯という家業を、みどり湯を、この土地で守り続けてきました。私も先代たちの姿を見て育ってきましたので、自然とそんな思いに至りましたね。

――リニューアルオープン後はすぐに軌道に乗ったのでしょうか?
正直、毎日が戦いでしたね。先代の銭湯とは形態が異なることもあり、アドバイスはもらえてもそれまでの前例が通用しなくなることもあり、先が見えない時期もありました……。
特に、子供が小学3年生と6年生の手がかかる時期なのにご飯も一緒に食べられない。土日に「お母さん!」と電話が来ても、家に帰ってあげることすらできなかった。夜の12時から清掃や点検を始め、終わるのは明け方4時すぎ。夫婦喧嘩もたくさんしましたし、最初は6kgも痩せてしまった。今だから笑い話にしているけど、当時は本当につらかったのを今でも鮮明に覚えています。

――そのような辛い日々のなかで、ご夫婦の原動力は何だったのでしょうか?
やはり、みどり湯が地域の皆様の生活の一部となってくれることが本当にうれしかった。日常生活の中でふと思い出してくださったり、「みどり湯のおじさん、おばさんに会いたくなった」といって来てくれたお客様とお話しすることが、すごくありがたいし、嬉しい。
改めてそういったお客様に支えられていたことを実感しているし、銭湯が提供できる価値は、いつの時代になっても不変で、地域に根付き、人や地域の繋がりを提供できることだと思います。そして、そんなことができる銭湯ってやっぱりすごいと思ってます。

――現代の銭湯に必要なことは何でしょうか?
昔みたいに体を洗い、湯につかってパッと出てくるような時代ではない。入浴料の高騰もあり、週に何回も気軽に来れるような場所でもなくなっている。だからこそ、せっかく来てくださる方の期待や思いに寄り添い、我々は真摯に応える必要があると思っています。
お客様の「みどり湯に来てよかった!」と思える瞬間を作ることが、責務だと思いますし、「チームみどり湯」で、地域に根付いて交流を持ち、これからも輪を広げていきたいです。

そのような思いもあり、チームみどり湯の25周年Tシャツも作ってみました。シンボルのカエル君をゴールドにして、背中には大きくみどり湯時間を楽しんでほしいという思いで「Enjoy my Green Time 」とプリントしております。
※サーモンピンク、カーキは完売。ブラックのみ各サイズ有(在庫僅少)

25周年限定Tシャツ

――最後に、この記事を見て来てくださる方に、みどり湯の楽しみ方を教えてください。
みどり湯にはいろんな楽しみ方があると思います! 皆様がそれぞれ楽しんで、リラックスできる空間を我々は全力で提供していきますので、ぜひ、あなたらしいみどり湯の過ごし方を探していただき、「みどり湯時間」を最高に楽しんでください! 
「Enjoy my Green Time !!」

――エピローグ
「失敗を恐れてはいけない。恐れなくてはいけないのは、失敗を恐れて何もしなくなることだ」。これは本田技研工業の創業者・本田宗一郎さんの名言で、筆者が一番好きな言葉だ。
まさにみどり湯のご夫婦は25年前にこの言葉のごとく、大きな挑戦に踏み出した。
この挑戦の裏には、多くの苦労やプレッシャーがあり、その都度「地域に根付いた憩いの場を提供することが、自分たちの使命だ」「何とかこの銭湯を守り続けたい」と、失敗を恐れずに二人三脚で全力で駆け抜けてきたのだ。
そして、25年前に始まった進取果敢な挑戦は、今もなお北区志茂の土地で続いている。近くにお越しの際は、あなたらしいみどり湯時間を探し、最高に楽しんでみてください!
最後に筆者からも言わせてください。「Enjoy my Green Time !!」
(写真・文:銭湯ライター 工藤 亮


【DATA】
HOTランドみどり湯(北区|志茂駅)
●銭湯お遍路番号:北区 8番
●住所:北区志茂3-25-9(銭湯マップはこちら

●TEL:03-5249-1426
●営業時間:15時~23時、日曜13時~23時
●定休日:月曜(祝日は翌日休)
●交通:東京メトロ南北線「志茂」駅下車、徒歩3分
●ホームページ:http://midoriyu.main.j
●Twitter:@KitakuNet

奇麗に清掃された解放感のある脱衣場

2種類の露天風呂

湯上がりには飲食スペースで最高の1杯を