空が赤く染まり始めた夕暮れ時に、やんちゃ盛りの少年たちが銭湯へ入っていく。

少年時代に一緒に銭湯に行った友達とは、大人になっても心の繋がっている友達である。

背中を流しあったり、湯船で泳いで一緒に怒られたりと、少年時代にしか味わえない思い出は自分にも数限りない。

今回撮影した曙湯は、三代続く宮造りの銭湯で、今でも薪で井戸水を沸かしている。それも相まって、木のぬくもりを体感できる銭湯である。

薪でお湯を沸かしている銭湯が必ず行う作業に、薪を切る仕事がある。だが、私は銭湯の撮影を始めてから、この薪を切る作業中の"リアル"な写真を撮れたことがない。いつかは撮りたいと思ってはいても、なかなかその光景に出くわすことはなかった。しかし、今回その光景が撮れたことは、私にはとても嬉しいことだった。夏の陽射しに汗ばむ屈強な主人の背中に、銭湯で生きている男の覚悟を感じたことは、被写体としての銭湯にまた一歩近づけた気がした。真剣に銭湯に向き合っていると、こんなご褒美に巡り会えるのがこのテーマの魅力でもある。

さて、少年時代の夏の思い出は、大人になっても鮮明に残っているもの。曙湯が思い出の舞台になる少年たちが羨ましい。もし、湯船で泳いでいる少年たちを見かけたら、よい思い出になるように叱ってあげてほしい。「泳ぐのは人がいない時にしなさい!!」とか……。銭湯だけにユーモアを「湯ーもあ」なんてね。

(写真家 今田耕太郎)

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【DATA】
曙湯(足立区|五反野駅)
●銭湯お遍路番号:足立区 3番
●住所:足立区足立4-22-3
●TEL:03-3886-0706
●営業時間:15〜24時
●定休日:木曜
●交通:東武伊勢崎線「五反野」駅下車、徒歩5分
●ホームページ:http://adachi1010.tokyo/member/akebonoyu/
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今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。

2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。

http://www.imadaphotoservice.com/