「お風呂上がりには素早く肌の保湿ケアを」が前回のテーマでした。そこで今回は保湿のために何を使えばいいか、を考えてみましょう。肌の保湿には普通、保湿剤というスキンケア用品を使います。一般的なスキンケア用品は薬事法によって、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」のどれかに分類されています。

「医薬品」とは、病気の「治療」を目的とした薬のことで、厚生労働省より配合されている有効成分の効果が認められたもの。効能や効果、使用量などが明確にされています。医薬品には医師が処方するものとドラックグストアなどで誰でも購入できる大衆薬(OTC)があります。医薬品の保湿剤にはワセリンや保湿外用剤などがあります。

「医薬部外品」は、厚生労働省が許可した効果・効能に有効な成分が一定の濃度で配合されたもので、予防や衛生目的に作られています。「肌荒れを防ぐ」「にきびを防ぐ」など、効果のある有効成分が配合されているのでその効果をうたうことができます。

「化粧品」は、医薬部外品よりも効能・効果が低く、清潔、美化、健やかに保つなどの目的で使用される製品です。そのため、医薬部外品に認められている効能や効果をパッケージなどに書くことはできません。どちらがいい、というわけではありませんが、医薬品→医薬部外品→化粧品の順に「医学的な効果」は弱くなっていくと理解すればいいでしょう。しかし、価格は「効果」に比例するわけではありません。「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」は表示が必ずありますから、購入の際、確認してください。

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ところで日本化粧品工業連合会によりますと、“「保湿」を目的に用いられる成分を、「保湿剤」または「モイスチャライザー」と呼びます。”と記載されています。

一般的に保湿効果がある成分とは、簡単にいうと「皮膚に水分を取り込み、乾燥を防ぐもの」、「皮膚に膜を張り、水分が逃げるのを防ぐもの」で、保湿剤はどれも同じ作用があるわけではありません。

ドラッグストアに行くといろいろな種類の保湿剤(OTC、医薬部外品、化粧品)が陳列されていますが、「どんなタイプの保湿剤を使用するか」が大切です。タイプは大別して軟膏、クリーム、ローションがあります。「どれだけしっとりしているか」が、軟膏、クリーム、ローションの違いと考えてください。したがってそれぞれ塗り心地と保湿力が異なります。これらは「基材」といい、基材に様々な成分を溶かして製品の特徴が決まっています。基材は軟膏、クリーム、ローションの順にサラサラな使い心地になります。

軟膏タイプの保湿剤は油っぽく、ワセリンのようにベトつきますが、水で流れないので長持ちし、保湿力が高いです。しかもクリームやローションに比べて不純物が少ないので刺激性が少なく、かぶれもほとんど気にする必要がありません。ベトつきが強いので広い範囲に塗るのには向きませんが、唇にリップ代わりに使うこともできます。

クリームタイプの保湿剤は顔よりも体に塗るものが多いようです。伸びがよく、しっとりして保湿力も強いので、保湿剤には最も多く使われている基材です。ローションタイプの保湿剤はさらさらしていて塗りやすいので、顔用に適しています。クリームよりべとつかない分、保湿力は落ちます。

では、基材に溶かす保湿剤の成分にはどのようなものがあるでしょうか。この成分は非常に多くの種類があり、これが入っていれば絶対に安心というものはありません。最も代表的な成分はセラミド、ヘパリン類似物質、尿素が挙げられます。

セラミドは肌の角質層で、細胞と細胞の間でスポンジのように水分や油分を抱えこんでいるようなもの。 別名、細胞間脂質ともいわれます。 肌や髪のうるおいに欠かせない働きをします。肌の角質層は角質細胞が何層にも重なってできており、その一つ一つを接着しているセラミドはもともと体内にある、肌にうるおいを与え成分なのです。肌はもともと生体を維持するためにバリア機能を持っていますが、このバリア機能を助けるのがセラミドというわけで、セラミドが肌にあることによって水分をたっぷり含んだみずみずしい肌が保たれるのです。

尿素は、ハンドクリームなどの化粧品に使われる成分で、角化症や手湿疹、進行性指掌角皮症、老人性乾皮症などの治療薬としても広く使われています。尿素は分子量が小さく、水によく馴染む性質を持っているので、保湿成分として働きます。尿素には、水分を吸着する作用があるからです。また尿素には、肌を柔らかくする働きもあります。これは、尿素の角質を溶かす働きによるものです。

ヘパリン類似物質は乾燥肌の治療用成分として、50年以上使われてきました。ヘパリン類似物質とは、体内にある「へパリン」という物質と似た成分のこと。「保湿」「血行促進」「抗炎症作用」の3つの働きがあり、乾燥肌に優れた効果があります。この3つの働きは、セラミドや尿素よりも肌の深いところから新陳代謝をうながすため、一時的な保湿と異なり、乾燥荒れ肌の根本的な解決に繋がる成分といわれています。じつはこのヘパリン類似物質を主成分とする医薬品がここ数カ月いろいろな話題を呼んできました。

昨年10月30日、東京新聞に次のような記事が載りました。

「アトピー性皮膚炎などの治療に使われる保湿用塗り薬の医療機関での処方が急増していることが、健康保険組合連合会(健保連)の調査で分かった。雑誌やインターネットで『美肌になれる』などと紹介されて広まり、公的医療保険の適用により低料金で入手できることから、化粧品代わりに求める女性が増えたことが背景とみられる。

 治療以外でのこうした処方は薬剤費を押し上げ、税金や保険料で賄う医療財政を圧迫。年間約九十三億円が無駄に支出されている可能性があり、厚生労働省は来年四月の診療報酬改定で処方量の制限など対策を講じる方針を固めた。近く、中央社会保険医療協議会(中医協、厚労相の諮問機関)で議論を求める。」

まさに処方が急増しているといわれる医薬品がヘパリン類似物質を主成分とするものなのです。件の製薬会社は別掲の書面で注意喚起をする事態となりました。

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相当な論議を経て「処方量の制限」は回避されましたが、医薬品である以上適正な使用が求められることは当然です。とはいうものの、巷の評判を聞くにつけ、湯上がり後に試したい気もしてなりませんが。

 

 

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