※本記事は、銭湯PR誌「1010」・152号(2022年6月発行)に掲載したインタビュー記事を再編集したものです。
お風呂はもちろんのこと、個性的な経営者の存在も銭湯の魅力の一つ。普段お店ではわからない、銭湯経営者の素顔に迫ります。
銭湯と異業種が手を組む企画は、今では珍しいことではない。だが、そうした動きが広がる以前から、銭湯の外に出て人やアイデアを結びつけてきた人物がいる。
豊島区・妙法湯の柳澤幸彦さんだ。「ハンズ湯」や「銭湯ファッションショー」をはじめとした数々の企画で、銭湯の新たな魅力と楽しみ方を発信し続けてきた。
ムーブメントの“はじまり”を支えた、その発想と思いに迫る。
スペイン語を学んでヨーロッパ中を放浪
――若い頃は、海外にもよく行かれていたそうですね。
柳澤 高校生の頃からお店(妙法湯)を手伝っていたんだけど、スペイン人のお客さんがいて、その人がすごくおもしろい人でさ。それでなんとなくスペイン語勉強しようかなと思って、大学は貿易学科のスペイン語コースに進学した。
――どんな大学生活だったんですか
柳澤 4年間、銀座のホテルのフロントでナイトシフトのバイトをして、貯めたお金で毎年休みになるとバックパックを背負ってヨーロッパへ旅行に行ってた。
――バックパッカーだったんですね!
柳澤 そうそう。スペインを中心に、ユーレイルパス使ってヨーロッパ中を回った。大学でスペイン語を習ってたからっていうのもあるけど、スペインは物価が安くて食べ物もおいしいし、一番居心地がよかった。「メヌー・デル・ディア」っていう定食があるんだけど、サラダ・スープ・メインディッシュにハーフワインがついて、当時500円。タバコもビールも100円ぐらい。
――カルチャーショックもいろいろと?
柳澤 デパートに入ったら床一面がヒマワリの種の殻とタバコの吸い殻でさ。お客さん、タバコ吸いながら服を選んでるんだよ。日本じゃ考えられないよね。電車も同じようでさ、火事が怖くないのかなって(笑)
――日本だとありえない!
柳澤 だよね。でも、いろんな国を周って、言葉が通じなくても旅ができたことで度胸がついたと思うよ。
――(冷戦体制下の)東側にも行ったんですか?
柳澤 行った。東ベルリン行ったらパンクがいてさ、「東側にもいるんだ!」って驚いた。あとはチャウシェスク政権が倒れる寸前のルーマニアとか。10ドル両替したらすごい札束になってさ。政情不安ですぐ出国したけど。
薬屋のチェーン店を経て、銭湯に併設された居酒屋を経営
――大学卒業後はどうしたんですか?
柳澤 チェーンの薬屋に就職した。流行ってる店もそうでない店もやって「どこ行っても通じるよ」って人に言われるぐらいに頑張った。3年ぐらい働いたところで、親父が店を建て替えて地下に店作るから、帰ってこいっていうことで店に戻ったんだ。それが平成元年のこと。
――今、岩盤浴が入っているスペースですね?
柳澤 そう。ちゃんこ居酒屋を始めたんだけど、とにかくお客さんが入っていつも混んでいてさ。池袋で飲み屋のママになっていた地元の女の子たちが、店終わった後にお客さんと一緒に来たり。バイトに大学の相撲部員を雇ってたんだけど、その子たちが人気でさ。ぽちゃぽちゃしてるから、お客さんにかわいがられる(笑)
その頃景気がよかったから、ヘネシーを置いてくれって言われたり。でもさ、畳敷きの居酒屋でヘネシー置けるかよ(笑)
居酒屋の店長しながら銭湯の仕舞い掃除を手伝ってたんだけど、親父がそろそろ体がきつくなってきたから銭湯のほうを継いでくれ、っていうことで、居酒屋を閉めて銭湯をついだのが平成16年。居酒屋も結構、長くやってたんだね。
業界全体の発展を願って
――柳澤さんにはコラボの話がよく持ち込まれますね。
柳澤 そうだね。豊島区のクリエイターが集まる「としま会議」に参加したり、(地元の)椎名町の街作りに参加しているうちに人脈が広がって、相談が持ち込まれるようになった。それが「ハンズ湯」「銭湯ファッションショー」をはじめ、「さんしゃいんの湯」「こんぶ湯」「ボンタン湯」の開催につながった感じかな。
――なるほど。
柳澤 異業種と組んだら、新しい展開が生まれるかもしれないと思って積極的に話を聞くようにしてる。こんな性格だから、相手も相談しやすいのかもしれない(笑) (東京都浴場組合の)広報委員(※)だから、業界全体をよくするにはどうすればいいか、いつも考えてるんだ。コラボ案件の他にも、ニュース番組の取材の申し込みもあるけど、多すぎて最近は断ってる。
――店以外も忙しいですね。
柳澤 アメリカに住んでる妹が俺のSNSを見て、仕事ばっかりしてると思ったみたいで「人生楽しまなきゃ!」って言われた(苦笑)。3年後には還暦を迎えるから、その頃にはのんびりしたいよ(笑)
(写真・文:編集部)
(※)2025年に広報委員を退任したが、現在も「マイトルビンの湯」など、さまざまなコラボイベントに関わっている
池袋・東急ハンズで開催された「ハンズ湯」で大人気だったゆっポくん(2016年)
池袋のサンシャインシティで足湯やグッズ販売などが行われる「さんしゃいんの湯」(2020年より不定期開催)
二酸化炭素の削減を目的に栽培された、横浜産のこんぶを使った「こんぶ湯」を実施(2021年)
台湾・北投(ベイトウ)温泉博物館とのコラボでは、台湾の温泉文化を発信(2023年)
【DATA】
妙法湯(豊島区|椎名町駅)
●銭湯お遍路番号:豊島区 14番
●住所:豊島区西池袋4-32-4(銭湯マップはこちら)
●TEL:03-3957-8433
●営業時間:15~25時
●定休日:月曜
●交通:西武池袋線「椎名町」駅下車、徒歩2分
●ホームページ:https://myohoyu.com/
●X(旧Twitter):@104087
日本初となる「軟水・炭酸・シルキー風呂」をはじめ、水風呂、電気風呂、ジェット風呂、ミクロンバイブラ風呂を設置
男性サウナは110℃、女性サウナは100℃に設定
ロビーと脱衣場の床は肌ざわりに優れたベルギー製の新素材を敷き詰めている
西武池袋線「椎名町」駅から歩いてすぐ。おしゃれなガラス張りの外観が目印










