日々、様々な仕事に忙殺され、気がついたら1ヵ月が経っている……。大慌てで息つく暇もなく毎日を過ごす、銭湯ライターの林田です。

普段は他メディアの編集として、ありとあらゆる締切に追われる日々を癒やしてくれるもの……それこそがずばり、銭湯とサウナとお酒です!

 

【2017年12月リニューアル! 今井健太郎さんデザインの進化系銭湯】

今回は、2017年12月にリニューアルオープンした「クアパレス藤」さんがなにやらすごい、という噂を聞きつけ、やって参りました。有楽町線千川駅から徒歩10分、静かな住宅街を通りぬけた先に現れる、黄緑色の看板が目印。

リニューアル時のコンセプトは、「テラリウム」(※)。デザイン・設計は銭湯建築家として有名な、あの今井健太郎さん。

(※)ガラス容器などで植物や生物を飼育する園芸のスタイル

 

【グリーンとアクアリウム、自然素材に囲まれた癒やしの空間】

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アクアリウムとグリーンが映えるシンプルな空間

店内に一歩足を踏み入れると、ほんのりとお香の香りが漂う、まるでおしゃれなスパのような雰囲気。そして驚くべきは、この大きなアクアリウム(水槽)である。

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リニューアル前から銭湯を見守る熱帯魚たち

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魚だけでなくサンゴやナマコ、ヒトデの姿も

水槽の中の熱帯魚は、店長の友野さんが知人から譲り受けたもので、色とりどりの魚の中にはなんと8年も生きている魚もいるという。熱帯魚の他にもサンゴ、ヒトデ、ナマコ、エビといったさまざまな海の生き物が飼育されており、見るものの目を飽きさせない。

アクアリウムの魅力はまだまだ語り尽くせないが、そろそろ浴室へ。

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窓が大きく、開放的でスタイリッシュな浴室

照明やグリーン、木目調の壁が見事に調和したモダンな浴室は、まさに「テラリウム」を彷彿とさせる、癒やしの空間。青と白のモザイクタイルの壁に、大きな窓から午後のやわらかな日差しがふりそそぐ……。ああ、ここはきっと、一番風呂や昼銭湯にもぴったりだ! と確信する。

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ホースシャワー式で、髪や体を洗いやすい

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男湯と女湯の境は、木目調の壁とグリーン

お湯の温度は41~42度前後。オーナーの辻村さん曰く、「熱すぎるのが苦手だから、ここのお湯は丁度いい」という意見も多いとか。小さなお子さんや銭湯の熱いお湯に慣れていない人も入りやすく、銭湯好きにとってものんびりと浸かることができる。

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白湯はジェットバス、寝湯、背中ジェットの3種類

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半月型の湯船は、たっぷりの酸素が含まれたナノ湯

そして忘れてはならないのがリゾート風の露天風呂。

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3~4人は入れるほどゆったりとした浴槽

鮮やかなグリーンと木目調の壁に彩られた露天風呂は、半露天ながら吹き抜けで、開放感抜群。

 

【サウナ好きを呼び込む仕掛けもばっちり!】

そして、毎週欠かさずサウナに通う筆者としては、サウナと水風呂も気になるところ。

まずはカウンターで、入浴料金とサウナ料金(追加300円)の支払いと一緒に、凍らせたミネラルウォーターを購入しよう(サウナ利用者は1本50円)。

キンキンに凍ったミネラルウォーターは、サウナ前後に飲むのにぴったり。普通のペットボトルを持ち込むと、サウナを楽しんでいる間にぬるくなってしまいがちだが、これなら最後まで冷えた水を味わえる。

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10人は入れそうな、広い男性用サウナ室

サウナの温度は男性用100℃、女性用60℃。水風呂は20℃前後とのこと。

女性用サウナ室にはシックなサウナマットが敷かれ、ほんのりとヒノキの香りが漂う。そしてBGMは、まさかの90年代J-POP。清潔で新しいサウナ室と90年代J-POPのコラボレーションはなんだか妙に落ち着いて、最高に居心地がいい。

低めの温度設定だが、遠赤外線の乾式サウナなので、身体の中から温まり、しっかり汗もかける。サウナが苦手な人や、サウナビギナーにおすすめだ。

そしてサウナを出てすぐ横には、しっかりと手足を伸ばしてつかれる、井戸水かけ流しの水風呂。温度は20℃というが、体感ではもっと冷たく感じる、心地よい水だった。

いい塩梅になったら水風呂を出て、露天風呂横のベンチで外気浴を。

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鮮やかなアイビーの横でほっと一息

サウナ→水風呂→外気浴の黄金セットを3回こなし、「整ったー!!!」と叫びたいのをこらえ、いそいそと脱衣場へ。

なんといってもここは、これで終わりではないのだ。

 

【酒好きよ、集まれ! 至福の生ビール】

湯上がりに待っているのはそう、生ビールという至福の逸品。銭湯で、しかもアクアリウムを眺めながらの一杯を楽しめるのだ。

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湯上がりにカウンターで一杯

アサヒスーパードライの生ビール。大きさは一口、グラス、ジョッキと3種類。迷わずジョッキをお願いし、店長の友野さんが丁寧に入れてくれた一杯が、サウナ上がりの乾いた体に染みわたる……。そして目の前には優雅に泳ぐ色とりどりの熱帯魚たち……。

グリーン、アクアリウム、お風呂、露天、サウナ、水風呂、そしてビール……と様々な癒やし要素が見事に絡み合い、究極のリラックス状態に。ここ1週間、銭湯に行く暇もないまま働きづめだった体がすっかりほぐれていった。(ちゃっかりおかわりビール、いただいた!)

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チーカマは子どもたちに大人気!で売り切れに

おつまみのチーカマやスナック菓子、ナッツなども50円~、種類豊富に取り揃え、どれにしようか迷ってしまうほど。そしてビールとおつまみ片手に見渡せば、土曜日の夕方ということもあり、家族連れがにぎやかに談笑している。活気あふれる待合室は、なんだか賑やかな駄菓子屋のよう。

 

【二人三脚。2倍のおもてなしで待っています】

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オーナーの辻村さん夫妻(前列)と店長の友野さん親子

10年ほど前、先代が亡くなったのをきっかけに、辻村さんが引き継いだ「クアパレス藤」。人手不足で再開できずにいた時、手を差し伸べたのが以前から交流のあった現店長の友野さんご家族だった。それ以来、辻村さんと友野さん一家は二人三脚で銭湯を支えてきたのだ。
辻村さん一家と友野さん一家。2つの家族の思いやりと優しさは、リニューアルされて新しくなった今も、しっかりとクアパレス藤に引き継がれている。

リニューアル後、増えた客層は意外にも若い男性や大学生のひとり客。「若い女性をターゲットにしてたんだけどねえ」と辻村さん。やはりサウナと生ビールの魔力に、若い男性が集まっているのだろうか?
 
とはいえ、もちろんどんなお客さんも大歓迎の、「究極の癒やし」を体感できる進化系おしゃれ銭湯。
仕事に疲れた夜にまたここを訪れて、サウナからの生ビールを堪能するぞ! と心に誓いながら帰路に着いたのだった。
(写真・文:銭湯ライター 林田紗央莉


【DATA】
クアパレス藤(板橋区|千川駅)
●銭湯お遍路番号:板橋区 12番
●住所:板橋区南町39-10
●TEL:03-3959-1126
●営業時間:15時半~24時(日祝13時~)
●定休日:水曜、第1木曜
●交通:東京メトロ有楽町線「千川」駅下車、徒歩13分
●ホームページ:http://1010itabashi.or.jp/detail/332/
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※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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フロントに置かれたテラリウムと
頂いた折り紙のきりん

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帰る頃には外はすっかり暗く
入り口は大人な雰囲気に