日本の浴槽から


銭湯の浴室には景色がある。浴槽から眺めたその景色は至福の景色。

この連載は、銭湯OLやすこが、銭湯の浴槽内から撮影した写真を中心にご紹介する「浴槽から眺めた景色がとっておきな銭湯」がテーマです。銭湯の写真は浴室全景がわかるものが一般的ですが、ここでは浴槽から眺めた浴室の風景を紹介します。

温かなお湯に浸かっている至福の時間。その魅力を少しでも感じて頂ければ幸いです。
※紹介する写真はすべて許可を経て撮影しています。


高砂湯さんはJR中野駅南口から徒歩約7分。夜になると灯りがつくシックな看板には、「露天風呂」「ガス遠赤外線サウナ」がちょっと大きめの文字で入っています。個人的に、この看板の主張では足りないほど、高砂湯さんの露天風呂は凄いと思っています。それに露天風呂以外の魅力もたくさん。早速ご紹介させてください。

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高砂湯さんの入り口

【1】銭湯の絶景とは、これが全て

細かい説明は抜きにして、まずはご覧頂きたいです。
露天風呂のドアを開け、湯口からトポトポ流れる湯に誘われて浴槽に近付き、腰を下ろした瞬間……この景色が目に飛び込みます。

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男湯露天風呂からの景色

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女湯露天風呂からの景色

浴槽に身を浸してから初めて姿を見せる、勇ましい煙突。これぞ、銭湯の露天風呂ならではの景色。自分のためだけに湯が沸かされているのだ……という錯覚に陥りそうなほど、この景色は極上です。
また、露天風呂からは空を直接仰ぎ見ることができるので、煙突に重なる景色もしっかり堪能できます。湯口からのお湯はまろやかで、薬湯のため香りも楽しめます。例え何回通ったとしても、同じ景色は見られない気がして、また入りたいという思いに駆られます。

露天風呂といえば「和」のしっとりした雰囲気が演出されることが多いですが、高砂湯さんの場合は明るくてまた違った趣。リニューアルの際に、岩風呂から現在のような造りにしたそうです。これもまた、壁面の清潔さがあってこその雰囲気です。

 

【2】見晴らしがいい

露天風呂も含めた高砂湯さんの特徴は、見晴らしがいいこと。これは屋内の浴室にも通じます。と申しますのも、主浴槽からはガラス越しに露天風呂、さらに脱衣場の両方をよく見渡すことができるのです(もっといえば、日中は露天風呂から脱衣場まで見渡すことができます)。
行き届いた換気、よく磨かれたガラス窓があってこそで、入念な手入れの気配を感じずにはいられません。
また、この見晴らしのよさは気持ちがいいだけではなく、ご年配の方やお子様も安心して楽しめる造りです。

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屋内の浴室から眺める露天風呂

【3】ペンキ絵を堪能するに、遮るものはなし

これ以上はないというほどの、よい景色を楽しめる高砂湯さんですが、さらに銭湯の醍醐味・ペンキ絵を眺めることもできます。ペンキ絵は丸山清人絵師による富士山。女湯側には華を添えるように桜が見え、湯気抜き窓から差し込む日差しとも相性抜群です。

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そして……、このペンキ絵を眺めるにしても、遮るものは一切ありません。ピカピカの空間は、よりペンキ絵の世界に没入させてくれる不思議な力があります。
見惚れているうちに、ふと目に留まったのは「昨日交換したの?」と思えるほどの光り具合のカラン。そんなカラン越しのペンキ絵はやけに気持ちよく、そこに遮るものは一切ないのです。思わずシャッターを切りました。

 

【4】どうしてこんなに気持ちいいのか

見晴らしがよくって、ピカピカで、造りとケアが織りなす気持ちいい空間、高砂湯。
店主・柿木さんに話を伺ったところ、高砂湯は昭和元(1926)年に創業。大幅なリニューアルは平成元(1989)年で、番台式からフロント式にシフトする等、現在の高砂湯はこの時がベースとなっているそうです。

しかし最近リニューアルしたような綺麗な佇まいが不思議で、思わず質問を重ねてしまいました。
「実は先月、脱衣場の床を張り替えましたよ」
確かに、床はツヤツヤのよい色合いで、その瞬間に思わずつま先立ちをしてしまいました。

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張り替えたばかりの脱衣場の床

「あとは、最近浴室の天井が気になっていまして。近々綺麗にしたいですね」
そう仰っても……、まだまだ綺麗な天井が見えます。
ここで私は悟りました。高砂湯さんが大事にされているおもてなしは、これ以上ない綺麗さであること。それも「修理しなきゃ」というタイミングではなく「修理をそろそろしなくては」という先回りのタイミングで保たれているということです。

「気になったら修理します」
そう仰る店主さんは、何度もびっくりする私にちょっと不思議そうな顔をされていました。これが高砂湯スタンダードなのです。

銭湯は生き物で、日によってコンディションが異なります。
しかし、高砂湯の見晴らしのよさは、自信を持ってご紹介できます。皆さまもぜひ、ご自身の目でこの景色を味わってみてください。

(写真・文:銭湯ライター 銭湯OLやすこ


【DATA】
高砂湯(中野区|中野駅)
●銭湯お遍路番号:中野区 23番
●住所:中野区中央4-49-2
●TEL:03-3380-4126
●営業時間:15~24時半
●定休日:月曜/祝日は翌日休
●交通:中央線「中野」駅下車、徒歩7分
東京メトロ丸ノ内線「新中野」駅下車、徒歩7分
●ホームページ:https://takasagoyu.jimdo.com/
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※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください

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サウナ横にある、富士山のモザイクタイル。屋内のペンキ絵以外でも富士山で楽しませてくれる

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狸が女湯の露天風呂に鎮座(ご親戚からの頂き物だそう)。下足箱前では信楽焼きの蛙がお出迎え