今回は、都営新宿線の篠崎駅から徒歩15分ほどのところにあるイーストランドという銭湯の姿を、レンズを通して切り取った。

イーストランドは2015年11月にリニューアルをしており、軟水を使用した大きい湯船が中央に配された広々とした空間を間接照明が照らし、落ち着いた雰囲気を醸し出している。綺麗な高野槙の木桶と、洗練された空間とのコントラスが面白い。

閉店後の清掃が一番大変な作業だと、ご主人は言う。夜中まで清掃作業をしていたと言うのに、午前中からの撮影開始に万全の用意をしてくださり、感謝を通り越して感動した。

撮影当日は梅雨らしい雨模様で、雨さえ降っていなければ外観の撮影をするつもりでいたのだが、淡い期待は無駄に終わり、内部の撮影に専念することにした。ただ、雨が幸いして柔らかい光線が浴室に入り込み、間接照明との共演が夜には見られない表情を見せてくれた。

ところで、葛飾北斎の富嶽三十六景などを見ていると、くっきりとした影を描いた絵がほとんど存在しない。逆にスペインの画家ダリの絵画などを見ると、影がとても重要な役割をしている。天候は人々の美意識や好みに大いに影響して、無意識のうちに生活に取り入れられていると私は思う。提灯や間接照明が好きな私たちは、DNAレベルで葛飾北斎に影響され、曇り空にも嫌気を感じていない気がするのである。

少し話がそれたが、撮影日午前中から降っていた雨も夕方には上がった。夏の気配を感じる夕焼け空を背景に、銭湯へやってくる家族を見ているとどこかホッとする。今回はそんな梅雨時の柔らかい光に包まれたイーストランドの写真を楽しんでほしい。

(写真家 今田耕太郎)

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【DATA】
イーストランド(江戸川区|篠崎駅)
●銭湯お遍路番号:江戸川区 42番
●住所:江戸川区西篠崎2-23-1
●TEL:03-3670-0945
●営業時間:14時半~23時
●定休日:月曜
●交通:都営新宿線「篠崎」駅下車、徒歩15分
●ホームページ:http://eastland.jp/
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今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。

2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。

http://www.imadaphotoservice.com/