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 いつの時代にも流行があり、その時代に合った物が新たに開発される。そのため、建築写真のプロフェッショナルが最新の機種に頼らざるを得ない生業であることは自覚している。

 たまには流れに歯向かってもみるが、結局は歯がゆい思いで終わる。それ故、長い間やり方を変えずに継続していることに、感動して胸が熱くなる事が多々ある。

 今回撮影した練馬区の三原台 富士の湯は、半世紀以上も前の開業で、当時の姿のまま今も営業を続けている。半世紀を時間に換算すると、438,300時間。実感が湧かない程とても長い時間であることがわかる。

 その間、富士の湯が変わらなかったことの一つに、脱衣場のロッカーを最小限しか用意しておらず、広々とした脱衣場の空間が維持されている点が挙げられる。今となってはロッカーが置かれている銭湯がほとんどであり、防犯を考えるとそのほうが優れていることは当然のことだと思う。私がこの空間に感じたことを写真に写したかったのは、それが造られた半世紀前から今日までの変化を想像して欲しいからである。

 銭湯が地域住民の憩いの場であり、銭湯が子どもの教育の場だった頃は、今とは違う賑わいがあり、交流も盛んだった。床に座り込み着替える親子、湯上がりに庭で談笑するご近所さん達。脱衣籠に荷物を入れて置いておいても、気心の知れた間柄なら物を盗もうなんて思わないだろう。この広々とした脱衣場は、そんなことが当たり前だった時代の名残ではないだろうか。

 今と昔のどちらが合理的かではなく、大切なのは何なのか、今一度立ち止まって考えることも必要な気がする。三原台 富士の湯に流れているゆっくりとした時間が、そんな気にさせてくれるのかもしれない。

(写真家 今田耕太郎)


【DATA】
三原台 富士の湯(練馬区|石神井公園駅)
●銭湯お遍路番号:練馬区25番
●住所:練馬区三原台1-30-1
●TEL:03-3923-5811
●営業時間:16〜23時
●定休日:月曜
●交通:西武池袋線「石神井公園」駅下車、徒歩10分
●ホームページ:–
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imada

今田耕太郎

1976年 北海道札幌市生まれ。建築写真カメラマン/写真家。

2014年4月よりフリーペーパー「1010」の表紙写真を担当。2015年4月からはHP「東京銭湯」のトップページ写真を手がける。

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