2018/12/10

トピック

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11/2から11/7にかけて目黒区のみどり湯で開催されたイラストレーター・ラジカル鈴木さんの個展「LOVESEXY風呂」は、「銭湯とプリンス」という異色のコラボイベントとして注目を集めた。本稿では11/3に「LOVESEXY風呂」開催記念として、みどり湯併設の「ギャラリーyururi」で行われたトークショーの模様をお伝えする。 
聞き手:目崎敬三(銭湯ライター)

 

■『LOVESEXY風呂』で“健全なトリップ”を

—— 今回はこのイベントを開催するにあたって「プリンスと銭湯」というテーマに絞って、5曲選んでいただきました。

ラジカル「まずはアルバム『1999』(1983年)の『Something In The Water(Does Not Compute)』。直訳すれば、「絶対水の中に何か入っている」という意味です。水の中になんか変なものが入っていて、みんなそれを飲んじゃって、なんか変になっちゃったよぅ。 つきあった女性が、なんか変わっちまったよ。俺には理解不能だぜ。でも俺は君が好きなんだ! っていう歌詞かなと思います。何が水の中に入っていたのかは分かりません。まあベタに考えれば、ドラッグかお酒のようなものなのかな? と」

—— プリンスは“アンチ・ドラッグ”で有名ですけど、この曲でも自分は飲んでも吸ってもいないんですよね。

ラジカル「プリンスは異父異母兄弟が多かったんですが、みんなドラッグにやられていて、それを見るのが辛かった、と語っています。あんな風にはなりたくないと。プリンスには音楽しかなかったんでしょうね」

—— ドラッグに頼らなくても、気分を高揚させることができるものがあればと。では、それは何かというと……。

ラジカル「もうそれは銭湯! 『LOVESEXY風呂』でしょう! あっ、今日の結論、もう言っちゃった(笑)」

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「LOVESEXY風呂」を企画した目崎氏(左)とラジカル鈴木氏

—— “健全なトリップ”ということですよね。では、次のプリンスの水にまつわる曲の紹介をお願いします。

ラジカル「時系列でいくと、超ヒットアルバム『パープルレイン』(1985年)の最初のシングル曲『ビートに抱かれて』のプロモーションビデオでは、バスタブに浸かるプリンスの姿が何度も登場します。またパープルレイン・ツアーのステージにもバスタブは登場しました。

自身の映画監督・主演作の『アンダー・ザ・チェリームーン』(1986年)でもプリンスはバスタブに浸かっています。

で、次の曲はアルバム『サイン・オブ・ザ・タイムス』(1987年)から『The Ballad Of Dorothy Parker』、ドロシー・パーカーのバラッドです。この曲のストーリーはこうです。恋人と口論になったプリンスは、そこを抜け出して通りの店に入り、ウェイトレスとして働くドロシーと出会います。二人は気が合い、一緒に泡風呂に入ることにしますが、プリンスは恋人がいるからとパンツを履いたまま泡風呂に入ります。やっぱりお風呂というのは浮世の憂さを忘れさせてくれるんですよね。恋人を裏切らないプリンスはカッコ良くて、男を上げたと思います。しかもこの曲の歌詞は、小話のように続いて、同じような事、パンツを履いて恋人とお風呂に入ったら仲直りできたという。なんと素晴らしいことでしょう!」

—— 日本にもフォークで「神田川」とかありますけれど、仲直りとか仲良くなる、お風呂や銭湯の曲って、やっぱりいいですよね。

ラジカル「次はプリンスの“お風呂ソング”のトップと言ってもいい『When 2 R in love』。非常にポップなアルバム『LOVESEXY』(1988年)の中の曲です。この『LOVESEXY』の前に内容が過激すぎて出せなかった重いテーマのアルバム『The Black Album』というのがあるんですが、この『When 2 R in love』という曲はどちらにも入っているんです。青と赤が混ざって紫、パープルですが、白の『LOVESEXY』と黒の『Black Album』の中間の灰色、グレイじゃなかったのかと思いますね、この曲『When 2 R in love』は。そのプリンスにとって重要な曲が、またお風呂がテーマだという。歌詞の一節にこうあります。“Come bathe with me / Let’s drown each other in each other’s emotions おいで、僕とおフロに入ろうよ – お互いの心の中に溺れてしまおう”。エロティックな行為が、プリンスに美しく歌われると崇高な行為のように思えてくるんですよね」

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プリンスと銭湯を愛するラジカル鈴木氏

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みどり湯の脱衣場に飾られたラジカル鈴木氏のイラスト

■銭湯は人と人が偶然出会う神聖な場所

—— 確かに銭湯の中にいると、一体感のようなものが芽生えてきますよね。うるさい若者がいても、まあ許せるかな、みたいな感覚は『LOVESEXY風呂』でしょうか(笑)

ラジカル「その通りですね(笑)。次の曲は問題作といっていいかもしれない『Extraloveable』です。1982年頃書かれて、長らくブートレッグ(海賊版)で知っていましたが、のちに録音し直されて正式にリリースされました。“Extraloveable”はプリンスの造語ですが、“特別に愛する人”といった感じでしょうか? “バスタブまで行くか? それかオレに引きずられるか?”といった過激な歌詞があるんですが、最後は“お願いだから一緒にお風呂に入ってくれ”と赦しを乞うんですよ。つまり、親密な相手と一緒にお風呂に入りたいのがプリンスであることは間違いないんです。もしかすると、SEXよりもお風呂の方が大事なのかもしれない?」

—— プリンスの音楽はもちろん素晴らしいですが、その歌詞についても、もっと評価されて欲しいですよね。

ラジカル「いや、まったくその通りです。最後の5曲目はアルバム『Emancipation』(1996年)から『The Holy River』です。非常にロマンチックで、まさに銭湯の湯船で聴きたい曲です。“River”、川というモチーフはスプリングスティーンやビリー・ジョエルにも歌われていますが、プリンスのこの曲においては、聖なる川なんです。こういう歌詞です。“Let’s go down 2 the holy river If we drown then we’ll be delivered 聖なる川へ行こう 僕らはそこで溺れ、救いを受けるだろう Oh, that night I drowned in her tears and mine And.. and instead of a glass of sorrow and wine Looking back y’all, I don’t miss nothing except the time その夜の僕は彼女と僕の涙に溺れた”。じつはこれ、プロポーズの曲なんです。聞いていると涙が出てきそうな美しい曲ですね。本当に人と人の出会いというのは聖なるものもあって、それを“川”と呼んだプリンスの才能は見事だと思います。銭湯は、いろんな人が偶然出会う場所ですが、プリンスの掲げた“LOVESEXY”という考え方が非常に息づいている場所ではないかと思います」

—— きれいにまとめていただきました。今日はラジカルさんにプリンスの素敵な曲を選んでいただいて“LOVESEXY風呂”についてお話いただきました。ありがとうございました。

ラジカル「さあ、みなさん。ややこしい話は抜きにして、銭湯に一緒に入りにいきましょう!」
《11/3 ギャラリーyururi(みどり湯併設ギャラリー)にて収録》

(前編はこちら)

※イラストレーター・ラジカル鈴木さんの個展「LOVESEXY風呂」は好評を受けて、12/7(金)~24(月祝)にかけて押上温泉 大黒湯(墨田区)でも開催。

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