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東京メトロ東西線・南砂町駅で降りて地上に出ると、丸八通りに沿って団地やマンション、公園などが並ぶのどかな風景が広がる。そんな町に店を構える「喜楽湯」を訪ねた。丸八通りを北上し、元八幡通りの交差点で左折。商店街を少し進むと「きらく湯」の看板が見える。入り口のモダンな青い瓦屋根が目印だ。

喜楽湯は初代の木戸信隆さんが1953(昭和28)年1月2日に開業した。信隆さんは石川県の出身で、戦前は深川の銭湯に奉公し、戦後は一旦郷里に戻ったものの、東京が恋しくなって再度上京、銭湯を営むようになったそうだ。その信隆さんと2代目の義隆さんが、現在のビル銭湯に建て替えたのは、1981(昭和56)年のこと。義隆さんは早く亡くなられたため、現在は義隆さんの奥様・順子さんと息子の和紀(かずのり)さんで店を切り盛りしている。

お店に入って目を引くのが、女湯の脱衣場にある巨大な「幸福の木」。1989(平成元)年に改修工事をした時、記念にもらって以来約30年、脱衣場の一角でお客さんの目を和ませてきた。適度な温度と湿度が保たれ環境がいいせいか、今では天井近くへ達するほどまでに成長し、喜楽湯のシンボルとなっている。

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浴室の壁を飾るのは、定番のペンキ絵ではなく大海原を進むヨットのタイル絵。青い空に浮かぶ雲もなんとなくかわいらしい。これは小さなタイルを貼り合わせて描かれたもので、浴室を広々と見せている。

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湯船は薬湯、バイブラ、ジェットと3つに分かれている。薬湯は日替わりでワイン、ラベンダー、森林浴などが人気だ。どの湯船も適温で心地よく、長居するお客さんが多いようだ。筆者も3つの湯船を順繰りにつかったが、大海原を進むヨットのタイル絵が生き生きとしており、雄大な気分で気持ちよく入浴できた。

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さて、順子さんが嫁いで来たのは今から30年前のこと。その頃と比べると、喜楽湯の前にある商店街は店が減り、家族連れがたくさん来てくれた近所の大規模な団地は高齢化が進んだほか、周辺のアパートは減り戸建て住宅が増えるなど、どんどん町の雰囲気が変わっているという。「最近、近所の団地の建て替えが始まったんです。きっと住人も入れ替わるでしょうから、新しく越してきた方にも大きなお風呂につかりに来てほしいですね」と順子さんは期待する。

息子の和紀さんは「時代に合わせた風呂屋のやり方をやらなきゃと思って、他のお風呂屋さんの話を参考にしています。自分の店でできることがあれば取り入れていきたい」と話す。

喜楽湯周辺は、元八幡の通り名を持つ富賀岡八幡宮(深川の富岡八幡宮は最初にこの八幡宮の場所に勧請されたという説がある)や仙台堀川公園などの散策スポットもあるので、町歩きを兼ねて下町銭湯へ出かけてみては。

こぢんまりした昔ながらの銭湯だが、優しい人柄の女将さんがほがらかな笑顔で迎えてくれる、居心地のいい店だ。
(写真・文:編集部)


【DATA】
喜楽湯(江東区|南砂町駅)
●銭湯お遍路番号:江東区 29番
●住所:江東区南砂4-15-19
●TEL:03-3644-3803
●営業時間:16時~22時半
●定休日:土曜
●交通:東京メトロ東西線「南砂町」駅より徒歩8分。バスの場合は「学校通り」下車、徒歩2分
●ホームページ:–
銭湯マップはこちら

※記事の内容は掲載時の情報です。最新の情報とは異なる場合がありますので、予め御了承ください。

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手前は毎日実施している薬湯の湯船

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天井近くまで成長した「幸福の木」(女湯の脱衣場)

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昔ながらのお釜型ドライヤ

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木戸順子さんと息子の和紀さん

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入り口はフロント形式

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店は商店街に面しているので、わかりやすい