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 13歳のときに見たアニメ「美少女戦士セーラームーン」に衝撃を受け、日本のアニメや漫画が大好きになったオーサ・イェークストロムさん。スウェーデンでイラストレーター・漫画家として活動後、2011年に東京へ移住。専門学校に通いながら、日本での日常を描いた4コマブログ「北欧女子が見つけた日本の不思議」が大人気になり、2015年3月には書籍化され、9月には第2巻も発売。さまざまなメディアからの取材を受けるなど、一躍話題の人となったオーサ・イェークストロムさんに、お話をうかがいました。

■働きながら漫画を描くつもりだったけど……

 子どもの頃に見た日本のアニメや漫画に影響を受けて、漫画家になろうと決めました。高校を卒業してからは、日本とスウェーデンを行ったり来たりしています。今は7回目の来日で、どうしても住んでみたいと思って、2011年から日本に住んでいます。

 最初は日本語学校に通って、その後は専門学校でグラフィックデザインの勉強をしていました。専門学校を卒業したら、仕事をしながら漫画を描くつもりだったんです。スウェーデンでは既に漫画の本を出していましたけど、日本で漫画の本を出すのはすごく難しいことだと思っていましたから。

 それが、日常生活で感じる日本とスウェーデンとのギャップを描いたブログ「北欧女子が見つけた日本の不思議」がすごく人気が出て、2015年3月に出した単行本もたくさんの方に読んでいただけたので、専門学校を卒業した後はプロの漫画家になりました。実は、専門学校の卒業制作と単行本の締切が同時だったので、とても大変でした(笑)。

 日本で漫画を出版するという夢を持っていましたが、こんなに早く夢がかなうとは思いませんでした。初めて出版社に作品の持ち込みをしたのが2014年5月ですから、1年でだいぶ人生が変わりましたね。

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■日本の出版社は、スピードが速い

 日本の出版社は、編集者がすごいと思います。メール出したら、夜中でもすぐ返信が来る。週末でも返事をしてくれます。スウェーデンだと返事はなかなか返ってこないし、週末はもちろん返事は来ません(笑)。単行本も1巻の作業を終えたら、すぐに2巻の話が出て驚きました。スウェーデンだとなかなか話は進まないし、作品も自由に描いてっていう感じ。でも、日本はスピード感があるし、作品にも編集者からのフィードバックがあって感激しました。

■外国人にとって便利なシェアハウス

 今は1つの家を大勢で借りて住む、シェアハウスに住んでいます。外国人にとってアパートを借りるのは難しいんですが、シェアハウスはネットで検索するとたくさんあるので、外国人には人気があります。スウェーデンと日本の家では造りが違うので、いろいろな失敗をしました。例えばトイレに入ったとき、トイレ用のスリッパを履いて出てきたり。最近は慣れてきたので、失敗は減りましたけど。

 日本人も住んでいるので、なにかわからないことがあるときは、いろいろ聞くことができてとても便利です。

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■ちょっととまどう、暗黙のルール

 日本に住み始めて4年経ちましたが、暗黙のルールみたいなものには、まだちょっと戸惑うことがありますね。「自転車は歩道走行禁止」って書いてあっても、みんな歩道走ってるとか(笑)。あと日本人のメールはすごく丁寧で、形が決まっているのが不思議。最初は「寒くなりましたね」とか天気の話、最後は「健康に気をつけてください」とか体を気遣う話。みんなそうですね。仕事のメールだけじゃなくて、長い間つきあっている友達からも、そんなメールが送られてくるのでビックリします(笑)。えーっと思って。丁寧なメールには丁寧に返そうと思って、一生懸命考えますけど。でも敬語は苦手です(笑)。

■寒くて暗くて長い、スウェーデンの冬

 育ったのはストックホルムの郊外です。家の隣は森だったので、子どもの頃はよく森で遊びました。雪は降りますけど、日本の山ほどは積もりません。スウェーデンは北極圏に近いから、夏は白夜でずっと明るいけど、冬は反対に寒くて暗くて、おまけに長い。だから夏はみんな開放的になりますね。気温は暑くても30℃くらい。日本の夏は暑すぎて苦しいので、いつも8月頃はスウェーデンに逃げてます(笑)。

 逆にスウェーデンの冬は辛いですが、日本の冬は素敵です。いつも晴れていて天気が素晴らしい。晴れていると元気になります。富士山も見えます(笑)。スウェーデンの家が暖かいのに比べて、日本の家は寒いんですけど、エアコンがあるから大丈夫。問題ないです(笑)。

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■サウナはスウェーデンでも人気

 スウェーデンでは基本的に入浴はシャワーです。冬でも家の中はそんなに寒くないですから大丈夫。バスタブを持っている人は多いけど、あまりお湯を張って入らないですね。

 サウナは元々フィンランドの文化ですけど、スウェーデンでも人気があります。ストックホルムには、プールがついているバスハウスがあります。そこにサウナがついている。プールで泳いでシャワーをあびて、サウナに入る感じです。トレーニングジムを備えていることもあります。でも水着着用なので、日本の銭湯とはちょっと違いますね(笑)。

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■銭湯は露天風呂がエキゾチック!

 以前、住んでいたところの近くに銭湯があって、シェアハウスの友達に誘われて行ったのが初めての銭湯体験です。そこの銭湯は、ほとんど高齢のお客さんしかいなくて、外国人は一人もいなくて珍しかったです。最初は服を脱いで入浴するのは恥ずかしかったですけど、すぐ慣れました。実は普段コンタクトをしているのですが、取ったら何も見えません。だから、他人の視線は気にならないです(笑)。

 熱いお湯は苦手なので、あまり長い時間湯船につかれないです。普通の銭湯のお湯でも私にとっては熱いので、5分ぐらいしか入っていられない。入って涼んで、入って涼んでを繰り返して、行ったり来たりするテニスボールみたいな感じです。

 いろいろあるお風呂の中でも、露天風呂が大好きです。この銭湯(ゆ屋和ごころ 吉の湯)にもありますね。温泉に露天風呂は多いですけど、銭湯にもあるのはうれしいです。スウェーデンには露天風呂はありません。エキゾチックな雰囲気が味わえますし、自然の中にいるような気がします。

 でも、この銭湯は終わる時間が早いので、それがちょっと悲しいです。私、夜遅くまでよく仕事してますから。

 電気風呂は知っていますけど、まだ体験したことはありません。スウェーデンで子どもの頃、電気と水は絶対に一緒にしてはダメと学んだので、安全と知っていても怖いです(笑)。

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■肩までつかると体が温まって気持ちいい

 肩までお湯につかるのは気持ちいいですね。最近は家のお風呂でも、お湯をためて入ることもあります。お湯につかるよさは、出てからも体が温かいこと。体の内側から温まっているのがよくわかります。

 スウェーデンから来た友達を銭湯に案内したこともありますよ。すごい気に入ってくれました。完璧にガイドできたって思いましたけど、一つ失敗がありました。どんな失敗かは漫画に描いたので読んでみてください(笑)。

 銭湯は店によって雰囲気が全然違うのがおもしろいです。前はラーメンにはまっていて、いろいろラーメンを食べ歩くラーメンツアーをやってましたけど、銭湯ツアーもおもしろそうですね。

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■いつかはストーリー漫画を描いてみたい

 スウェーデンでは、ストーリー漫画を出していたので、日本でもまたいつか描きたいと思いますけど、今は4コマ漫画を頑張ります。長く日本に住んでいると新たな発見が減ってくるでしょうから、今のスタイルを永遠に続けるのは難しいかもしれません。まあ、先のことはわかりませんね。

 漫画やアニメは世界に影響力がある日本文化ですが、どこでも気持ちいい銭湯があるのは、やはり素晴らしい文化だと思いますよ。これからも疲れたら、銭湯のお湯につかって漫画を頑張ります(笑)。

(写真:望月ロウ 文:タナカユウジ)

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【プロフィール】

オーサ・イェークストロムさん 1983年生まれ、スウェーデン出身。スウェーデンでイラストレーター・漫画家として活動後、2011年より東京へ移り住む。好きな食べ物はラーメン。一番好きなアニメは『少女革命ウテナ』、一番好きな漫画は『ナナ』。ブログ「北欧女子が見つけた日本の不思議」がアメブロ総合ランキングで1位を記録するなど話題を呼び、2015年3月初のコミックエッセイ「北欧女子オーサが見つけた日本の不思議」(KADOKAWA刊)が発売。

ブログ「北欧女子が見つけた日本の不思議」


【取材地DATA】

今回のインタビューは、オーサさんが時折利用する杉並区「ゆ家和ごころ 吉の湯」で行われた。広い露天コーナーに設置された高濃度炭酸泉、壷風呂(水、土は温泉)、サウナ、水風呂が人気だ。

ゆ家和ごころ 吉の湯(杉並区)

●銭湯お遍路番号:杉並区32番

●住所:杉並区成田東1-14-7

●TEL:03-3315-1766

●営業時間:13時半〜22時(最終入場21時半)

●定休日:月曜

●交通:京王井の頭線「永福町」駅よりバス。「松ノ木住宅」下車、徒歩5分

●ホームページ:http://www.geocities.jp/yuyawagokoro2/

銭湯マップはこちら

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