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国内外を問わず、銭湯の魅力を発信する銭湯大使・ステファニー。なぜフランス人の彼女は銭湯に通っているのか? 外国人から見た銭湯の魅力を紹介。


前回は、「美容と健康」という側面から銭湯の魅力についてお話ししました。広くて深い湯船にゆっくり浸かることで、ヒートショックプロテイン(HSP※)の生成を促して、体の免疫力を高めたり、しっかり汗をかいてデトックスをして、スキンケアの効果を促進させたりと、心と身体の健康と美容にとっても効果のある銭湯。※HSP = 傷ついた細胞を修復するタンパク質。

前回のお話はこちらから→http://www.1010.or.jp/mag-steph-01/

さて、今回は、私が感じる「銭湯の魅力」Vol.2として、銭湯の「コミュニティ」についてお話しします。銭湯は「体を洗うところ」というのはもちろんなのですが、それ以外にも、地域のコミュニティとしての役割があります。銭湯で出会う様々な人とのコミュニケーションを通して、私が感じたことは、次の3つです。

①銭湯は、マナーを教えてくれる
②銭湯は、こころがふれあう場所
③銭湯は、地域の情報ステーション

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~1つ目 マナーを教えてくれる~

銭湯におけるコミュニケーションは、まず暖簾をくぐってからの "挨拶" から始まります。そして、脱衣場・浴室に入るときも「こんにちは」「こんばんは」。カランで隣になった人や、湯船に入るときも。挨拶はとても大切です。

なかには会話をしたくない人もいらっしゃいます。雰囲気でなんとなくわかりますが、中には話したくても、もしくは、ちょっと話してみたいのだけれども、会話のきっかけがなかったり、恥ずかしかったりで、なかなか話せない人もいるのではないでしょうか? そんな時、私はよく、「ここのお湯、気持ちいですね」と話しかけてしまいます。すると、さらに次の会話へ。日常の話、天気の話、恋愛の話もたまにしちゃいます。

お風呂に入った瞬間、頭も空っぽになって、とても落ち着いて、優しい気持ちになります。会話も自然と優しくて、ライトな話題に。お風呂自体の話もよくしますね。ペンキ絵とか、設備とか、お湯の質とか。

常連さん同士が集まるとお風呂の中は賑わいますが、私もよく混じって常連さんたちと会話します。

そのためには、お風呂のマナーを大事にすることがとても大切。きちんと挨拶をして、綺麗に銭湯を使う。特に私は外国人なので、「あの人ちゃんと体洗ってから入るかしら?」「湯船にタオルを入れたりしないかしら?」と思われやすいのでしょう。

その分、銭湯を丁寧に綺麗に使い、周りの方への心配りをちゃんとすることで、常連さんたちも私のような「新人」に対して優しく接してくれるようになります。銭湯に慣れていなかった頃、勝手がわからず濡れたまま脱衣場に戻ってしまい、大変叱られました。

大人になって叱られることはなかなかないので、とても恥ずかしい思いをしましたが、こんな風に、マナーを教えてくれる場所があることは非常に大切だと感じました。

銭湯のマナーは、大人にとってはもちろんですが、小さい子供にとっても大事です。物を大切に使うこと、周りの人へ気遣い・心配りをすること、礼儀正しくする等、子供への躾という意味で、非常に効果的だと思います。

また、普段、家のお風呂ではできないようなコミュニケーションが銭湯ではできるので、親と子供の関係性を育むには、とてもよい役割を果たしてくれるのではないでしょうか。

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~2つ目 心のふれあい~

銭湯には、多くの方が訪れますが、やはり高齢でお独りで住まわれている方も多くいらっしゃいます。その方たちにとっても、銭湯はいろんな人とコミュニケーションをとれる、とても楽しい場所です。

様々な年代の、いろんな背景をもつ人が、同じ場所に集まり、"裸の付き合い" をする。ここは、多くの人と、地位や立場に関係なく、話ができる場所です(もちろん、人生の先輩方への敬意の気持ちを抱きつつ、です)。

皆さんそれぞれ、違う人生を過ごしていますが、銭湯におけるお風呂の時間というのは、ただ体を洗うだけではないと思います。心の疲れもとり、リフレッシュするという貴重な時間を、同じ銭湯という場所で共有していると感じます。そのような心のふれあいを通して、地域の方々との関係性をより深めることができるのだと思います。

湯上りの生ビール・牛乳も大好きです! 特に、ビールが飲めると、アルコールも手伝ってもっと会話が弾みますよね!

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~3つ目 地域の情報ステーション~

銭湯は、その地域に昔からあって、街の中心として地域に根付いています。銭湯のご主人や常連さんは、その土地のことにとてもお詳しい。となると、その地域の情報ステーションの一つが、実は銭湯なのです。

例えば、新しい街に引っ越して、街の情報が全くない時。銭湯で得られる情報はとても貴重で、役に立つものばかりです。

また、私は旅行をする時も、必ずその地域の銭湯に行きますが、美味しいお食事処や居酒屋などに行きたい時、その地域の人が美味しいと言い、よく行くお店に行きたいと思うので、銭湯にいる人に聞いてみます。

すると、お店のほかにも、その地方や地域独特の文化を教えてくれたりするので、旅行で景色や美味しいものを楽しむだけでなく、より深くその地域の文化を体験することができ、とても充実した旅行になります。

例えば、三重県の伊勢神宮に観光に行った際、宿の近くの銭湯で、伊勢神宮の歴史やお参りの仕方を、銭湯の常連さんに教えていただきました。そこで教えてもらわなければ、ただ行ってみた、で終わってしまっていたところを、銭湯のおかげで、より深く伊勢神宮を楽しむことができました。

このように、銭湯が持つコミュニティという一面は、私が銭湯を大好きになった理由の一つです。

銭湯に通い始めたころは、まだまだ日本語が不十分だった私でしたが、銭湯のご主人や常連の皆さんは優しく、何とか私とコミュニケーションをとろうとしてくださって、感動しましたし、本当に優しい気持ちになりました。コミュニケーションをするのに、言語力はそこまで重要ではないとも思いました。銭湯はとても心が温かくなる場所だと強く感じ、毎週リピートするようになりました。

銭湯の温かい雰囲気は、銭湯の建物とそこに集まる人によって創り出されます。より居心地の良い空間を創るためには、銭湯の見た目や設備だけでなく、集まる人の姿勢も大切だと思いました。だから私は、マナーを大切にしたいですし、今ある銭湯のコミュニティを本当に大切にしなければいけないと思います。

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最後になりますが、私は東京だけでなく、全国各地の銭湯にも行きたいと思っています。関西、近畿地方も少しづつ回っていますし、最近は九州の銭湯にも行きました。

関西で感じたのは、お客さん同士の会話がとても盛り上がっているということ。東京と比べると、他人に声をかけることに抵抗がない人が多いからでしょうか? 当たり前のように皆さんいろんな人と会話していますので、面白いですね。九州では、残念ながら地震の被害がまだまだ残っています。それでも、九州の銭湯同士で本当に助け合っていることに、とても感動しました。

これからも、全国の銭湯を応援していきたいと思っています。


【プロフィール】
ステファニー フランス・プロバンス生まれ。リヨン大学で日本文学を専攻し、2008年、交換留学のため来日。その際に銭湯と出会いファンとなる。2012年に再来日。以来、銭湯を楽しむ日々を送っている。豊島区浴場組合ホームページで銭湯ナビゲーターを務めるほか、国内外のメディアで銭湯の魅力を発信中。2015年、日本銭湯文化協会より銭湯大使に任命。
ブログ(英語・日本語):http://www.tokyo-sento.com/
Instagram:@_stephaniemelanie
#dokodemosento

 

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「銭湯サポーターフォーラム2016」で抽選レディとして登場したステファニーさん(中央)。左は銭湯OLやすこさん、右はフォーラム司会の池沢絵(かい)さん