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いささか古い話になりますが、1998年の厚生労働省の疫学調査によりますと、疲労感を自覚している人の割合は約60%。そのうちの37%が6ヵ月以上疲れを感じたままの、いわゆる慢性疲労状態であることが分かりました。それから20年。社会はますますストレスと疲労が蓄積し続けているようです。そして、疲れた体を癒すのは何といっても充実したバスタイムと良好な睡眠。まずはひとっ風呂。特に熱い風呂がよさそう……。

ところで、イメージと現実がかけ離れている例はたくさんありますが、「熱い風呂に浸かれば疲れが取れそう」もそんな例の一つかもしれません。『なぜあなたの疲れはとれないのか?』(大阪市立大学特任教授・梶本修身著)によれば、熱いお風呂はむしろ疲労を増大させ、体をボロボロにしてしまう、と書かれています。理由は、43度以上の湯に肩まで浸かると体温、心拍、血圧が大きく変化し、それを調整するために自律神経に過大な負担がかかること。

自律神経に負担がかかると、悪玉老化物質として有名な活性酸素が体内に大量発生します。するとそれが正常細胞を攻撃して傷つけます。傷ついた細胞からは老廃物が排出され、その老廃物の一種から誘発される形で体内に発生するのが疲労因子「FF」なのです。つまり、熱い風呂は身体を疲労させるメカニズムが、医学的には解明されているというわけです。

サウナも同じように「疲労が取れる」と誤解されている面があります。70~100度のサウナに入ってじっくり汗をかいていると、体にいいように感じる人は少なくありません。しかし、梶本教授によれば、短時間なら血行改善の効果があるが5分以上入ると疲労がかえって蓄積する、と指摘しています。5分……サウナーにとってはあまりいい情報ではありませんが、長時間サウナに入って疲れが取れた、と感じるとすればどうやらそれは錯覚なのかもしれません。

では、疲労回復に入浴は向かない?

そんなことは全くありません。むしろ、最強の疲労回復入浴法があるのです。梶本教授は「40度くらいのお湯に半身浴で浸かること」と提言していますし、入浴医学の権威である早坂信哉・東京都市大学教授も「38~40度の湯に15分間、肩まで浸かること」と唱えています。半身浴と全身浴、見解の相違はありますが、血圧が高めの方はいきなり全身浴をするのではなく、半身浴で少しずつ体を慣らしていくことが必要です。

さらに、疲れているけれどもうひと頑張りしなくてはいけない、という場合の入浴法について、早坂教授は次のように述べています。

「42度の熱い湯に5分ほど入って交感神経を高め、気合いを入れましょう。43度のシャワーを2分ほど浴びるのも効果的です」(『たった1℃が体を変える』KADOKAWA)

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湯船に浸かると、温熱効果で血行が良くなるだけではありません。もう一つの効果、浮力効果で入浴中は筋肉を使うことがありませんから、とりわけリラックスできます。精神的な疲労にも肉体的な疲労にも適温・適時の入浴は十分な効果があるわけです。疲れがたまってるな、と感じたらまずはぬるい湯船にじっくり体を沈めてください。


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