AdobeStock_72992760-th


このテーマはかつて『1010』誌でも取り上げられ、いろいろなメディアも紹介されています。結論から言えば、「カゼをひいている時でも入浴は大丈夫」「むしろカゼは入浴によって早く治すことができる」「ただし高熱が出ている時は入浴はNG」という3点に集約されるようです。

にもかかわらず、カゼの時はお風呂ダメじゃない? お風呂に入ると悪化するから我慢しなさい、そういわれたことありませんか? しかし歴史的にみると、実は「カゼをひいている時は入浴するな」には、確固たる医学的な根拠があったのです。

この「カゼをひいている時は入浴するな」は日本特有の言葉で、海外ではこのようなことがいわれないようなのです。なぜ日本特有なのか。それは日本人が世界に冠たる風呂好き民族だからなのです。多くの日本人は、ほうっておけば体調が悪くても風呂に入ってしまいがち。でも昔の五右衛門風呂を想定してみてください。水道がなかった時代、井戸から桶で水を運び、火を焚き、やっとお風呂に入れたのです。カゼをひいているのに、隙間風が吹き込む風呂場で裸になるなんて、考えただけでもカゼは悪化しそうです。

水道やガスが発達した昭和になっても、今のように家にお風呂が付いていて当たり前、とはなりませんでした。長い間、都会では「入浴は銭湯」の時代が続きました。家に風呂場があったとしても、浴室は防水のためタイルなどで囲われ、じめっとした寒い場所でした。お風呂上がりはいくら温熱効果でポカポカしているといっても、銭湯なら家までの帰り道、せっかく温まった体はどんどん冷えていきます。空調の行き届かない家庭風呂でも、寒い脱衣場で体をふいたり髪を乾かしたりしている間に体は急速に冷えていきます。カゼをひいて体調がすぐれない時に、体温が奪われて冷えていく、そうなるとその体調は悪化する一方です。

カゼは体が冷えている時に発症しやすく、かつ進行しやすい感染症です。風呂上がりの冷えがまさに症状を加速する、だからカゼをひいているとき風呂はダメ、となったわけですね。これに対して欧米では、温まるために風呂に入るという習慣がありません。なにより体臭をごまかすために香水が発達したくらいですから、そういう国々ではわざわざ「カゼをひいたら風呂に入るな」といわなくてもいいわけです。

そういう時代を経てきたので、カゼをひいている時はお風呂に入ってはいけない、といい伝えられるようになったのだと思います。でも今は事情が変わりました。家庭風呂の普及率は東京でも100%に近く、全館空調とまではいかなくても寒い時の暖房範囲は広くなり、脱衣場も廊下も温度はそこそこ保たれているので、浴室との気温差がかなり縮まりました。

その環境の変化から、「カゼをひいている時はお風呂に入ってはいけない」説が見直され、「カゼをひいてもお風呂に入ってもよい」とか「むしろ積極的に入浴しろ」説に変わってきたのではないでしょうか。つまり、入浴による温熱効果をカゼ治療に積極的に取り入れようという発想になったということです。

ほとんどの病気の原因は体の冷えだ、と唱える医者も数多くいます。単純にいえば、体が暖かければ病気にかかりにくい、ということです。寒くなるとカゼをひく人が多くなるのは、体温を正常に維持できない人が多いから、ということもできます。そして、冷えた体は温めろ、内側から温めるには運動と食事、外側から温めるならお風呂、となるわけです。温めれば代謝が上がり体内の免疫力も活発になりますから、「むしろ積極的に入浴しろ」は合理的な考え方といえるでしょう。

そうはいっても、どんな症状でもお風呂に入ったほうがいいわけではありません。症状によってはお風呂に入ると悪化してしまう恐れもあるのです。医学的にはあくまでも、その人その時の症状や状態によって判断が変わります。でもいちいちお医者さんに尋ねに行くわけにもいきません。そこで、「こんな人」「こんな時」はお風呂NGをまとめてみました。

① 乳幼児や高齢者は、免疫力が低下しているときの急激な温度差はとても危険。ですから、汗をかいたらタオルで体を拭き、安静にしていることが大切です。

② 38度以上の高熱が出ている時は、37度台くらいに下がるまで入浴は控えましょう。お風呂に入って熱を上げれば早く治る、という人もいないわけではありませんが、一般に高熱が出れば体力は相当に落ちていますから、医学的に入浴は危険な行為といえます。まれに体温が平熱よりも下がってしまうこともあります。この時も入浴は避けたほうがよいので、平熱に戻るまで待ってください。

AdobeStock_50167517 (1)-th

③ カゼをひいて筋肉や関節に痛みがある時は、これから熱が上がってくるサインかもしれませんからご注意ください。

④ 下痢や嘔吐が伴うときはどうでしょうか。冷えやストレスからくる下痢なら、お風呂に入ることによって体が温まり、状態がよくなる場合があります。しかし外的要因での下痢や嘔吐は、体力も低下し脱水しやすい状態ですから、お風呂に入り汗をかいてしまうと、さらに水分を失ってしまい危険です。こんな方は症状が治まるまでお風呂は入らないでください。

上記の項目に該当しない比較的軽い症状の人は、むしろお風呂に入ることをおすすめします。前述したように、体を温めると免疫力がアップし、抗ウィルス作用が発動されるからです。ただし、いくつか注意が必要です。一つは血圧。カゼをひいて寝ていると、一般的に血圧が低くなり、体温も下がります。 体を起こすだけでも血圧は高くなりますから、お風呂に入る直前まで横になっていると、急激な血圧変化で病状を悪化させることがあります。また、寝ている時は汗をかくので、そのままお風呂に入ると脱水症状を引き起こしてしまう可能性もあります。ですから、カゼをひいている時入浴する場合、血圧が下がりすぎたり上がりすぎたりしていないかを確認してください。血圧が正常ならば、脱衣場と浴室を十分に温めてから入浴しましょう。さらに脱水症状を防ぐために、入浴前にコップ1杯の水を飲みましょう。

湯船の温度は体に負担がかからない程度、つまり40度ぐらいを目安にしてください。人によって温まり方は異なりますが、おおむね10分から長くて15分程度までとしましょう。長湯のし過ぎは体力を消耗します。いくら温まることが目的といっても、カゼのときは浸かりすぎないように注意してください。

こうしたカゼ対策の入浴は銭湯でも可能です。ただし入浴後の湯冷めにだけは十分注意し、湯上がり後に汗や水分を素早くふき取って、バスタオルで保温しながら体温が平常に戻るまで脱衣場でじっとしていてください。汗をかきながらの帰宅はもってのほか。普段以上に湯上がり後のケアに配慮してカゼ退治をしてください。


th_map

銭湯の検索はWEB版「東京銭湯マップ」でどうぞ

 

th_銭湯マップ2017表紙

新しい銭湯お遍路マップ(2017年10月10日発行)は1部100円(税込)で、都内の各銭湯や東京都浴場組合にて販売中。詳細はこちらをご覧ください