12月22日(金)の冬至といえば「ゆず湯」の日として知られていますが、これは古くから伝わる健康祈願のハーブ湯です。東京の銭湯で実施されるハーブ湯も、年々多彩になっていますが、新宿区の銭湯では12月31日まで「ハーブ湯総選挙」と銘打ったイベントを開催しています。「11種類の天然ハーブのお湯の中からお気に入りに投票して、ハーブ湯のナンバーワンを決めるのじゃ!」と叫んでいるのは新宿銭湯のゆるキャラ「ゆげじい」です。

使われているハーブはラベンダー、ペパーミント、ローズ、カモミール、レモンとレモングラス、ハイビスカス、ローズヒップ、ルイボス、ユーカリ、緑茶、ジャスミン。いずれも個性的で心地よい香りのハーブです。これらの中から、フレグランスの世界で人気のある、いくつかのハーブについて解説しましょう。

 

① カモミール
カモミールにはローマン、ジャーマンなど何種類かありますが、香りの世界での主流はローマンカモミールです。4000年前には既にバビロニアで薬草として使われていました。ヨーロッパでは伝統的な民間薬で、日本にはオランダから伝わったといわれます。このハーブは神経系のトラブルに適応しており、過敏な人や神経質な人、気力が減退している人に対して神経のバランスを適度に保つ作用があるといわれています。

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② レモン
料理の世界では酸味として用いられますが、香りの世界では清涼感のある刺激的なエッセンスなので、気分のリフレッシュには最適なハーブです。果実より果皮に薬効成分があります。脳波を通して集中力を高める作用があることが認められており、また殺菌力も強いため、その香りは空気の清浄に効果があります。香りの主成分はリモネンという物質で、咳止め薬の成分として使われています。

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③ レモングラス
レモンという名は付いていますが、これはイネ科の植物です。ハーブティーとしてよく飲まれており、フレッシュな香りはシトラールという成分によるもので、非常にレモンに近いのに酸味はありません。レモングラスには抗炎症作用、鎮痛作用、抗菌作用、抗うつ作用、解熱作用、殺虫作用など幅広い薬効があるといわれています。ヨーロッパでは入浴剤としても広く使われているハーブです。

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④ ユーカリ
ユーカリは正式名が「ユーカリプタス」で、種類は変種も含めると1000ほどあるといわれ、その数も新たな発見で年々増加しています。オーストラリアの先住民、アボリジニが傷をいやすのに用いていたことから世界に広がりました。香りの世界でよく使われるのはユーカリ・ラジアタ、ユーカリ・グローブルス、ユーカリ・シトリオドラの3種。グローブルスとラジアタは成分が似ており、呼吸器系の炎症に対する効果があるといわれています。したがって、カゼをひく人が多いこの季節にはぴったりのハーブといえるでしょう。去痰作用(※)やうっ血の除去もあるとされています。(※)気管や気管支にたまった痰を除去すること。

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⑤ ジャスミン
ジャスミンといえばまずジャスミンティーを思い浮かべますね。モクセイ科の植物で約300種あるといわれています。ジャスモンという成分がジャスミンの官能的な香りを特徴づけており、古くから生殖機能を高める「子宮のハーブ」などと呼ばれてきました。医学的には抗うつ作用、鎮痛・鎮静作用、保湿作用、通軽作用(月経不順の改善)などがあるといわれています。

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⑥ ローズヒップ
名前から分かるとおり、ローズヒップはイヌバラまたはハマナスの実。ハーブティーとして使われたり、実を絞ってローズヒップ油を作ったり、ジャムに加工したりします。実はビタミンCが豊富ですが、入浴剤として用いると、肌に張りを与えたり毛穴の開きを改善したりする美肌効果があるといわれています。ジャスミンと並んで女性のための入浴剤といえるかもしれません。

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ハーブ湯は香りのよさだけでなく、さまざまな薬効を含んでいます。極めて緩やかな作用ですから、1回入浴しただけでその効果を認識することはできないかもしれませんが、寒さが深まるこの季節、ぜひ自分に合うハーブ湯を銭湯でお楽しみください。

参考文献:
『医師・薬剤師のための実践アロマテラピー』
『アロマテラピー32の基本ガイド』

 

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