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「暑熱馴化(順化)」(しょねつじゅんか)という言葉をご存知ですか? 体を少しずつ暑さに順応させる、という意味ですが、これは運動や入浴によって発汗を促すことで可能になります。この季節に問題となる熱中症を防止するには、暑熱馴化の訓練が最も大切だと言われています。

熱中症はなぜ起こるのでしょうか。人体は常に多くの熱を生み出しています。体温が上がりすぎると自律神経の働きで末梢血管を広げ、皮膚に多くの血液を送り込みます。こうして皮膚から熱を放出します。また、汗も体温を下げる仕組みの一つになっており、発汗で皮膚から汗が蒸発するときに熱を奪うようになっています。

放熱と発汗が体温を下げるシステムなのですが、外気が皮膚温より高い場合、そのシステムに乱れが生じ、放熱や発汗がしにくくなります。その結果、体内に熱がこもったり、急激な発汗で体内の水分や塩分が奪われたりして起こる症状が熱中症。痙攣やめまい、湿疹、頭痛、吐き気などが特徴です。重症になると死に至ることもあります。

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2010年以降、高温の日が増えた影響でこの熱中症が注目されるようになりました。総務省は去る8月8日、今年5月1日から8月6日の熱中症搬送人数が37,437人であると発表しました。昨年同時期と比べて約7,000人増えており、65歳以上の高齢者が5割を占めています。

熱中症は「環境」「体質」「行動」の3つの要因が重なると起きやすいといわれています。「環境」は気温の高さ、湿度の高さ、日差しの強さ、通気の弱さ、服装の状態(厚着はよくない)など。「体質」はその日の体調という基本的な問題以外に、糖尿病、肥満、運動不足の人などです。高齢者がなりやすいことは前述しましたが、乳幼児も同様にリスクが高くなります。「行動」は長時間の炎天下での労働や水分補給がしにくい状況、激しい運動が挙げられます。

エアコンのある生活がごく当たり前に日常化し、温暖化に反比例して体をなるべく冷たく維持しようとし、その結果徐々に汗をかかなくなった、あるいは汗をかくのが下手になった……それが熱中症増加の根底にあるのではないでしょうか。さらに「家の中にいても熱中症になる危険があるから、暑いときはエアコンを使うように」という「正論」が、汗かき下手のスパイラルを起こしている感があります。

前置きが長くなりましたが、こうした状況を脱するために銭湯を利用しよう、というのが今回の本題。熱中症予防のカギは冒頭に書いた「暑熱馴化」なのです。この馴化がうまくいくと、皮膚の血流量が増えやすくなり、汗で排出する塩分が減り、体温が上がりにくくなり、水分補給で体液量が回復しやすくなります。この訓練のポイントが運動と入浴ですが、自力で汗をかける体質作りはまず体を動かすこと。つまり運動は不可欠です。

同時に汗をしっかりかく入浴も、さらに大事な脱熱中症体質のポイントになります。ベストは銭湯の炭酸泉。38~40℃の炭酸泉に15~20分使ってしっかり汗をかく。これをできれば2~3週間連日行う。たったこれだけ。ただ、本当は5月、6月あたりにこれを実践していれば、今頃は熱中症の心配いらずになっていたかもしれませんが、今からでも遅くはありません。炭酸泉の銭湯がお近くになければ、20分程度浸かれるぬるい浴槽を選びましょう。

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銭湯で人気の高濃度炭酸泉(手前の湯船) 練馬区・川場湯

 

ただし、この訓練入浴も決して無理はしないこと。のぼせそうになったら、湯船から上がって休息することです。また、入浴前、入浴中、入浴後の水分補給も怠ってはいけません。体温が上がり、発汗しているときは上がりすぎを防ぐサイン、つまり体温調節がうまくいっている証拠です。逆に汗が出なくなったら、調節機能が働いていない危険な状態といえるでしょう。

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お風呂につかって汗かき習慣を呼びかけるポスター

 

暑いから湯船にはさっと入る、シャワーで済ます、夏バテだから銭湯へ行くのは面倒だ……、いずれも有りがちな心理ですが、このちょっとした横着さが熱中症体質を育んでいるのです。銭湯までのウォーキングも、汗かき上手になる運動としてぜひ取り入れたいものです。


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WEB版「東京銭湯マップ」では、炭酸泉やぬる湯の湯船がある銭湯の検索ができる